2016 Fiscal Year Research-status Report
マニフォールド理論と単粒子解析実験データを用いた革新的4次元イメージング法の構築
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16K20913
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉留 崇 東北大学, 工学研究科, 助教 (90456830)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 単粒子解析実験 / マニフォールド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,これまでに開発してきた,マニフォールドラーニングに基づいて単粒子解析実験(コヒーレントX線回折イメージング実験や低温電子顕微鏡実験)のデータを構造多形の観点から分類するソフトウェア「閻魔」を発展させ,4次元イメージングを行う方法の構築を行うことにある。シミュレーションを用いた研究を行い、以下の成果を得た。 (1)主に2状態を有するタンパク質を用いたコヒーレントX線回折イメージング実験を想定したシミュレーションを行なった。その際,実際のコヒーレントX線回折イメージング実験におけるデータ数,回折強度で行い,さらに小角領域のデータ欠損,ポアソンノイズも考慮した。ソフトウェア「閻魔」を用いてデータ分類を行い,EMCアルゴリズムを用いて2つの3次元電子密度分布を得ることに成功した。シミュレーションに用いた2つのPDB構造と比較した所,得られた3次元電子密度分布はPDB構造とコンシステントだった。この結果は,ソフトウェア「閻魔」を用いた分類結果の妥当性を示している。またソフトウェア「閻魔」が実際のコヒーレントX線回折イメージング実験データへ適用可能であることを示唆している。 (2)シミュレーションデータとソフトウェア「閻魔」を用いて,シングルドメインのタンパク質のマルコフ状態モデルの構築を行なった。タンパク質の折り畳みに伴う物理量の時間発展をマルコフ状態モデルで計算し,直接シミュレーションから得られた物理量の時間発展と比較した所,良好に一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的の達成に向け,当初の計画通りほぼ順調に経過している。特に複数の3次元電子密度分布が構築できたことから,4次元イメージングへの光が見えてきた。一方,試料氷包埋効果を考慮したデータの分類は,次年度に持ち越しとなった。計算機上でアモルファス氷に閉じ込めた試料から投影像を作成したが,投影像に粒子の輪郭がほとんど見えなかったためである。このため,ローパスフィルターを用いて輪郭を明確にする必要が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,当初の計画通りほぼ順調に経過しており,これまでの研究を継続・発展させる。まず,アモルファス氷に閉じ込めた試料から作成した投影像にローパスフィルターを適用し,試料の輪郭を明確にした後,ソフトウェア「閻魔」を用いた分類及びEMCアルゴリズムを用いた3次元電子密度分布を行う。また,ソフトウェア「閻魔」をコヒーレントX線回折イメージング実験データに適用する。対象は,慶應義塾大学の中迫教授から提供された,酸化銅微粒子の実験データである。最後に,得られた成果を論文としてまとめる。
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