2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K20919
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市之瀬 敏晴 東北大学, 生命科学研究科, 研究支援者 (20774748)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 記憶学習 / キノコ体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエのキノコ体は無脊椎動物の記憶中枢として知られ、様々な記憶を処理する神経回路機構を理解する上で非常に良いモデルである。匂い刺激を砂糖報酬や電気ショック罰で条件付けし、匂いに対する誘引や忌避を引き起こす嗅覚報酬記憶と嗅覚罰記憶は、どちらもキノコ体で形成される。本研究はショウジョウバエのキノコ体をモデルに、記憶学習における情報処理回路の時間軸に沿った変遷を明らかにするため、神経回路構造とその機能の両面から解析を行なった。 キノコ体出力神経の各細胞種の詳細な形態を明らかにするため、細胞種特異的に蛍光マーカーを発現させ、共焦点顕微鏡を用いた三次元的な観察を行なった。蛍光マーカーとしては、細胞全体の形態を明らかにするための細胞膜マーカー、前シナプスの位置を明らかにするための前シナプスマーカー、後シナプスの位置を明らかにするための後シナプスマーカーを用いた。この解析により、マクロ(神経投射パターン)とミクロ(微細構造)の両面から、キノコ体からの神経出力構造の全貌を解明することができた。 また、それぞれの細胞種について、その神経伝達を細胞種特異的に阻害し、報酬記憶と罰記憶の、記憶学習行動における重要性を定量した。この神経伝達阻害はShibirets1タンパク質を遺伝学的に強制的に発現させることで、時期特異的に行い、それぞれの細胞種がいつ重要であるかを定量した。この行動遺伝学的解析により、記憶学習において、いつ・どの神経細胞が重要であるか、その変遷を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画に記載した、キノコ体出力神経の形態解析と、記憶学習における各細胞種の重要性の変遷を明らかにするための実験をほぼ順調に終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に得られた各神経細胞種の形態情報と、記憶学習行動における重要性を統合して理解するための解析を行う。具体的には、記憶学習における各細胞種の重要性の程度を、脳の三次元顕微鏡画像に重ね合わせ、記憶を処理する神経回路を視覚的に明らかにする。具体的には、(1) 各細胞種のキノコ体内における投射領域の解析から、記憶情報がコードされる領域の変遷を明らかにする、(2) 報酬記憶と罰記憶を処理する細胞種を比較し、性質の異なる二つの記憶を処理する回路の変遷を比較する、(3) 各細胞種の微細構造と、記憶学習における機能の相関関係を解析し、神経構造と機能の一般的な法則を見出だす。
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Causes of Carryover |
消耗品等の使用量が見込みより少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
神経回路構造とその機能について大規模かつ包括的な解析を行うための実験・解析機材を購入する。
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Research Products
(3 results)