2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Sociological Study on "Care Tourism" Centered on the Visit of the Earthquake Disaster Ruins
Project/Area Number |
16K20956
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高橋 雅也 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (00549743)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 震災遺構 / ケアツーリズム / スタディツアー / 感情経験 |
Outline of Annual Research Achievements |
震災遺構を見学するスタディツアーがいかに展開されているのかについて、最終年度は旧石巻市立大川小学校を中心として、実際のスタディツアーに同行して参与観察を行った。来訪者たちにとって、このスタディツアーがどのような経験になったかを考える上では、震災遺構の中でも大川小学校がもつ特異性を考慮する必要がある。すなわち、被災時に適切な避難行動がとれていれば、助かった児童や教職員が多かったのではないかという、訴訟にも発展した論争的性格を帯びた震災遺構であり、その検証の場を訪れるという意味合いを持っている点である。そのことは、来訪者たちが案内者とともに校舎の裏山に上がったさいには、この避難経路の安全性/有効性と、この経路が被災時に選ばれなかったことへの憤りを口々に述べていた点からも確認できた。また、校舎内や校庭の案内を受けるさいには、来訪者たちは平時における伸びやかな学校生活を想像する一方で、亡くなった児童が感じたであろう津波への恐怖や焦燥という対照的な感情経験を追体験して、その印象を一様に語っていた点もスタディツアーという経験を特徴づけていた。この平時/被災時の対照性への言及は、(被害状況は大きく異なる)仙台市荒浜小学校の来訪者における感情経験にも通底するものであり、震災遺構の見学等によるケアツーリズムに見られる参加者の感情経験の一端を確かに示すものとして重要である。 また、復興開発計画における復興ツーリズムの位置づけについては、駅周辺や市内各所と現地との間に、交通利便性と回遊性が十分に確立しているとは言い難い点が影響しており、未だ計画段階とはいえ曖昧な位置づけに留まっていた。このことはスタディツアーにおける被災者の「語り」が定型化および再生産されてない点と無縁ではない。しかしそれは厳粛な事実に対峙する真摯な態度と、来訪者による多様な理解に対して開かれた寛容さであると筆者には観察された。
|
Research Products
(1 results)