2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K20960
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
廣瀬 裕二 千葉大学, 大学院工学研究科, 助教 (60400991)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 粘度上昇 / 可逆ゲル / ヨウ素 / ヨウ化リチウム / エタノール / 有機溶媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子量が大きく、低濃度のポリエチレングリコール水溶液にナノシリカが分散した系は振盪でゲル化する。この系を色素増感太陽電池の液漏れ防止および発電効率向上のため用いることを目指し、ヨウ素とヨウ化リチウムを加えた際に試料の流動性がどう変化するかを調べた。ヨウ化リチウムのみを加えた場合、粘度が急上昇してゲル化するせん断速度は塩を加えない場合より低下したが、同じモル濃度の塩化ナトリウムの場合より早い速度で回転させる必要があった。 一方、ヨウ化リチウムとヨウ素を加えた場合も、ヨウ素の量が増えるとヨウ素が溶解せずに黒い凝集体が生成した。この中から凝集体を取り出してもゲル化は発生したが、ポリエチレングリコールが加わることで水溶液中におけるヨウ化リチウムとヨウ素がイオンとなる際に起こる平衡が、水に不溶なヨウ素側に偏ったため凝集体が現れたと推測される。 そのためヨウ素が溶解しやすい、水溶性の有機溶媒を加えて同様のゲル化が発生するかを調べた。分子量200の低分子量重合体であるポリエチレングリコール、およびエチレングリコールを30 wt%含む系ではレオメーター中および手による振盪によってもゲル化の発生は見られなかった。逆にエチレングリコール10 wt%の系では水のみの場合よりもゲル化が容易に発生したことから、有機溶媒を混合した試料が色素増感太陽電池の電解液への適用に効果的であることが分かった。このほかエタノールやイソプロピルアルコールでも同じく振盪によるゲル化が起こった。特にエタノールの場合は40 wt%と高い含有率においてもせん断速度の増大に伴う粘度上昇が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヨウ素は単独では水に溶解しないものの、ヨウ化リチウムとの混合によって三ヨウ化物イオンとなり水に溶けることを確認していたが、本研究においてポリエチレングリコールを加えたことによりヨウ素とヨウ化リチウムがイオンとなる際の平衡のバランスが崩れ、不溶性の凝集体が生成した。そのため当初予定のpHや粒子表面の修飾といった、粒子同士の反発相互作用を高めることではなく、ヨウ素を溶解できる条件を探すために有機溶媒を混合した試料の研究を中心に行った。 有機溶媒を加えた多くの場合、振盪によってゲル化する現象が見られなくなったものの、エチレングリコールを少量加えた系では逆により低いせん断速度でゲル化が発生するなど、有機溶媒を加えても振盪によって可逆的にゲル化する試料を見出すことができた。エチレングリコール10 wt%の溶媒を用いた系におけるヨウ素の溶解は十分な量ではないものの、ヨウ化リチウム単独の場合では見られない、無色から黄色への色の変化が確認された。またこの試料も振盪によってゲル化した。 さらに、有機溶媒を含まない系にヨウ素を十分量加え、凝集体を取り除いたものでも振盪によるゲル化、せん断速度増大に伴う粘度の急上昇が見られた。この試料にはシリカ粒子及びポリエチレングリコールが残存し、さらに赤褐色であったことからヨウ素が十分溶解していたと考えられる。 以上のことから、特に十分ヨウ素を加えた場合では凝集体を取り除いたため試料中の正確な成分比は不明のままであるものの、ヨウ素を含む可逆ゲルの創生は達成され色素増感太陽電池の研究を行うのに支障は少ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヨウ素を十分含み、各成分の組成が明確となっている分散系の流動挙動についてレオメーターで確認した後、平成29年度計画の通り実際に色素増感太陽電池を組み立ててその発電効率の測定を行う。試料は水のみの場合、有機溶媒を加えた場合の双方で試す予定であるが、凝集体の生成が抑えられない場合は上述の通りヨウ素を多く入れ、凝集体を取り除くことで正確な試料の組成が不明な状態でも太陽電池を作成して発電効率の実験を行う。 地震による振動によって生じるせん断速度は、レオメーターで測定されるものより小さいことから、より容易にゲル化が発生するように高い平均分子量のポリエチレングリコールを用いる予定である。なお一部実験は平均分子量50万のものから200万のものに切り替えて既に実施している。 また、発電効率の実験では光照射によってやや高温になることが予想されることから、有機溶媒を用いる際には沸点の高いポリエチレングリコールなどを含む系を中心に実験する予定である。
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Causes of Carryover |
当初は粘度測定のためのレオメーターに150万円以上の費用を要する予定であったが、代理店よりデモ機を安く払下げていただくことができたことから、スピンドル(部品)を含め70万円程度(測定範囲をカバーするため2台)に抑えることができた。このため平成28年度当初予定より使用額は抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
色素増感太陽電池の性能計測のためのライト等の装置にかかる費用が多くなる見込みである。また現在掲載が確定したオープンアクセスのジャーナルへの掲載料が10万円程度、今後必要である。さらに複数のオープンアクセスジャーナルへの投稿も予定している。スペインでの国際会議への参加登録も行っており、平成29年度旅費として計上する見込みである。
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Research Products
(5 results)