2017 Fiscal Year Annual Research Report
Neural basis for pathway-selective activation of amygdala
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16K20963
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮道 和成 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (30612577)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 性的二形性 / フェロモン / 内側扁桃体 / 視床下部 / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、雄マウスの涙液に分泌されるタンパク質性の雄フェロモンESP1によって雌マウスの性受け入れ行動ロードシスが促進されるという性フェロモンの活性に関し、その神経作用機構を解明した。まず、順行性ウイルストレーシングによってESP1受容体の下流に位置する神経核を網羅的に可視化し、それらについて薬理遺伝学な介入実験を行うことでESP1が効果を発揮するために、内側扁桃体後腹部 (MeApv) の機能が必要であることを明らかにした。次に、投射経路選択的な軸索マッピング法によって、MeApvにおいて視床下部の異なる領域 (腹内側核 VMH あるいは内側視索前野 MPA) に選択的に投射する亜集団を見出し、これらがESP1によって受ける活性化のパターンに顕著な雌雄差があることを発見した。すなわちMeApvからVMHに投射するニューロンは雌のみで、MeApvからMPAに投射するニューロンは雄のみで、ESP1により活性化された。このように同一の感覚入力が雌雄で異なるルートに「振り分けられる」構造を見出したのは哺乳類では初めてのケースである。次に、雌マウスのVMHの背側領域 (VMHd) にはESP1によって活性化されるニューロンがあり、この活性がESP1による性受け入れ行動の促進に必要かつ十分であることを薬理遺伝学、遺伝学的なTRAP法を組み合わせて示した。最後に、VMHdから中脳の中心灰白質への投射経路がESP1の情報伝達を担うことを経路選択的な神経活動の遮断実験により示した。以上の成果は、フェロモンの入力が行動出力へと変換される仕組みを神経回路のレベルで初めて解き明かしたものである。本成果は2017年7月にNeuron誌に発表された。国内外のニュース記事に取り上げられたほか社会行動を司る神経回路についての総説にも大きく取り上げられるなど好意的な評価をもって迎えられている。
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