2016 Fiscal Year Research-status Report
子供の言語獲得におけるレファレンスセット計算の役割
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16K20979
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 奈津美 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (30761431)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | RS計算 / 文理解 / 第一言語獲得 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、レファレンスセット計算(Reference-set computation)と呼ばれる演算が含まれる文に対する子供の理解を調査し、子供はレファレンスセット計算を大人と同じように行うことができないことを示してきた。本研究では、オンライン実験を含む一連の実験を行なうことで、子供のレファレンスセット計算の過程とレファレンスセット計算が子供にとって困難な原因を明らかにすることを目的としていた。 計画していた最初の実験は、真偽値判断課題(Truth Value Judgmeng Task)用いて、レファレンスセット計算が必要な尺度推意の計算を含む文の理解を測定するものであった。しかしながら、真偽値判断課題を用いてかき混ぜ文の理解を調査したMinai et al (2015)において、これまで指摘されてきた文脈の設定以外にも韻律を変化させることにより得られる結果が異なることが指摘された。本研究で用いる予定であった尺度推意の計算を含む文は、子供が大人と同じ解釈を示すのは偶然の確率を超えない、と予測されるものである。もし予測通りの結果が得られたとしても、文脈や韻律情報がどう影響するのかが明らかではない状態では、結果の解釈が難しいと考え、真偽値判断課題を用いた実験を行うことができなくなった。解決策として、計画していた実験を行う前に、文脈や韻律が子供の文理解に与える影響を調べる新たな実験を行うことになった。2016年度はその実験の設計をした。それら実験は2017年度に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述したように、Minai et al (2015)の研究成果により、本研究でTVJTを用いて実験を行うことに大きな問題が生じた。このような、当初予期していなかった問題を解決するために、2016年度は研究計画を練り直した。具体的には、新たな実験を行うことで、これまで子供の文理解に影響を与えると指摘されてきた文脈や韻律情報に関して、もう一歩踏み込んだ調査を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
Otsu (1994)は子供のかき混ぜ文の理解を測定し、文脈なしにテスト文が提示された場合、大人と異なる理解を示すが、適切な文脈と共に提示した場合には正しく理解することができることを示した。Minai et al (2015)は文脈設定を行わなくても韻律を変化させることでも子供はかき混ぜ文を正しく理解することができたと報告している。これら先行研究で指摘された、文脈と韻律という異なる二つの要因がなぜ子供を正しい理解へと導くことができたのか、ということを2つの実験を行うことで明らかにする。当初計画していた実験は、これらの実験をおこなった後に行う。
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Causes of Carryover |
予定していた実験計画に関連する新しい研究報告が見つかり、実験計画を設計し直す必要性が生じた。そのため、本来計画していた実験を遂行することができず、実験遂行に必要な経費を支出することができなかった。 実験を遂行することができなかったことにより、当初予定していた国際学会での発表も見送ることとなったため、旅費の支出もなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、新たに計画した実験を遂行する予定であるので、謝礼と人件費の支出が増えることが予想される。また、それら実験で得られた結果も国際学会で報告する予定であるので、本年度使用することがなかった旅費の支出もある予定である。
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