2016 Fiscal Year Research-status Report
ホスファチジルイノシトールの特徴的脂肪酸組成の生物学的意義の解明
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16K20996
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
今江 理恵子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60584000)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ホスファチジルイノシトール / 脂肪肝 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスファチジルイノシトール(PI)は、イノシトール環のリン酸化により様々な生命現象に関与する重要な生体膜リン脂質である。PIは脂肪酸部分についても特徴的な構造を有しており、そのほとんどがsn-1位にステアリン酸、sn-2位にアラキドン酸を結合している。これまでに、PIのsn-2位にアラキドン酸を導入する脂肪酸転移酵素としてLPIAT1を同定しており、LPIAT1が脳の発生など、個体の発生段階で重要な機能を果たすことを明らかにしている。一方、LPIAT1のコンディショナルKOマウスの解析から、成体マウスにおいてLPIAT1を欠損させると、肝臓で脂肪が蓄積する。さらに、肝臓特異的LPIAT1欠損マウスにおいても、同様の脂肪肝が発症する。LPIAT1がどのように脂肪肝の発症に関わるのか、その分子メカニズムを解析するため、この現象を細胞レベルで解析できる系の構築を試みた。ヒト肝癌由来細胞株Huh-7を用いて、LPIAT1のノックダウンを行い、PIの脂肪酸組成及びトリグリセリド(TG)の蓄積を解析した。その結果、siRNAをトランスフェクションして3日後ではまだPIの脂肪酸組成の変化が大きくなく、TGの蓄積もあまり顕著に起こらないが、siRNAをトランスフェクションして3日のサイクルを2回行い、計6日後に解析を行ったところ、アラキドン酸を含むPI分子種が顕著に低下しており、TGの量が顕著に増加することが分かった。このことから、マウスにおける脂肪肝と同様の現象を、培養細胞レベルで再現することができた。また、この結果から、脂肪肝の発症が肝実質細胞における異常が原因で起こることをより強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、PI の特徴的な脂肪酸組成の生理的意義を、分子レベルで解明することである。具体的には、マウス個体レベルでLPIAT1の欠損により見出している脂肪肝という表現型に着目して、異常発祥の分子機構を臓器、細胞レベルで解析し、PIの脂肪酸分子種の変動との関連を明らかにする。今年度、脂肪肝について細胞レベルで評価できる系ができたことは大きな意義がある。この系を用いて、TGが蓄積する原因としてどの過程に異常が生じているかを生化学的に絞り込み、異常発症の原因となる分子経路を明らかにすることで、PIの脂肪酸組成変化により影響を受けるタンパク質分子を探っていくことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在構築した培養細胞の系において、まずノックダウンで見られた現象がLPIAT1によりレスキューされるかを確認する。次に、TGが蓄積する原因として考えられる、合成の亢進、分泌の低下、分解の低下の可能性について、生化学的に検証する。具体的には、[14C]グリセロールや[14C]脂肪酸を細胞に添加して、TAG の合成速度を調べる。また、これらのラベル化合物を用いたパルスチェイス実験を行い、TAG の分解や分泌(VLDL として)に異常があるか調べる。LPIAT1のノックダウンによってどの過程に異常が生じているかが絞り込めてきたら、その過程におけるさらに詳細な解析(遺伝子発現変動解析や細胞染色、刺激依存的なシグナル活性化の評価など)を行い、異常の発症機構を分子レベルで明らかにする。培養細胞で明らかになった結果は、マウス肝臓に還元し、個体レベルでも同様に起きているか検証しながら進める。
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Causes of Carryover |
肝臓以外の臓器におけるPIの脂肪酸組成の意義の解析については、翌年度以降に行うこととしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品:薬品は遺伝子工学(ポリメラーゼ、制限酵素、プレップ、シークエンス等)および生化学的解析(抗体等)に要する試薬を中心に購入する(70万円)。プラスティック器具として主に細胞培養用シャーレ、チューブ類を購入する(20万円)。ガラス器具:脂質は通常ガラス器具で取り扱う。変化が予想される脂質(PI、PIPs 等)の定量を行う(10万円)。 旅費:得られた研究成果を学会にて発表し、最新の情報を収集する。海外1回(15~20万円)、国内2回(10万円)の予定である。 その他:得られた研究成果を学術雑誌に投稿するため、投稿料として10万円使用する予定である。
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