2016 Fiscal Year Research-status Report
ボアホール内ミューオン検出器で探る跡津川断層帯の三次元密度構造
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16K20999
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 勝也 東京大学, 地震研究所, 特任研究員 (40773578)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミューオグラフィー / 宇宙線 / ミューオン / 断層 / ボアホール |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、宇宙線ミューオンを用いた火山などの巨大構造物の透視が可能となり、関連する技術の更なる高度化・多様化に向けて現在も活発に議論・研究がなされている。しかし、これまでの検出器はその大きさのため地上にしか設置できず、上空から飛来するミューオンを用いたこの手法では、地下構造を透視することはできなかった。そこで本研究では、宇宙線ミューオンを用いて地下構造を透視するための観測技術を開発・実用化することを目的として、研究・開発を進めている。 平成28年度は、直径15 cm のボアホール内に設置可能でかつ地下構造の透視に十分な角度分解能を有する新型宇宙線ミューオン観測装置を開発し、完成した観測装置を地下100mまで下ろして跡津川断層の断層破砕帯近傍の平均密度構造調査を実施した。 観測装置は台形の細長いシンチレーターを二層の八角形に配置し、2本のマルチアノード型光電子増倍管と32chのADCを使用して狭小空間内で粒子の軌跡検出を実現した。更に、エレクトロニクスを含めた全体の消費電力を運用時で15 W程度に抑える事に成功し、バッテリーでの運用に十分耐える低消費電力を実現した。 当該観測装置を用いた跡津川断層の断層破砕帯近傍の平均密度構造調査の結果、過去の掘削調査の記録と矛盾しない方向に断層破砕帯による低密度領域を検出し、観測装置の性能と当該研究の目的が現在の研究計画で十分達成可能であることを確認した。データの解析および解釈は途上であり、今後は今回得られたデータを基に断層の幾何学的構造の推定手法開発を進める。 また、本番観測で予定している地下350mまで観測装置を下ろすための準備はほぼ完了しており、平成29年5月から観測を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
観測装置の開発、および地下100mまでの観測実施を予定通り完了し、本番観測に向けた観測装置の改良も既に完了している。また、本番観測は予定より早い平成29年5月から開始予定で、その分観測期間を長くとることができ、最終結果の統計精度向上が期待できる。 これらに加えてデータ解析も順調に進んでおり、本番観測の終了後可能な限り速く最終成果を公表すべく準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、地下100mまでの観測結果を詳細に解析し、断層の走向・傾斜、破砕帯の密度形状を決定する手法を確立する。また、これと並行して地下350mまでの本番観測を実施し、平成28年度の結果と同様に解析する事で、地下350mまでの広範囲な跡津川断層の走向・傾斜、破砕帯の密度形状を決定する。更に、本研究による解析結果と跡津川断層域の他の調査結果を相補的に理解することで、より詳細な跡津川断層破砕帯近傍の密度構造を明らかにし、密度構造の三次元イメージの取得を目指す。特に、重力測定の結果は地下の情報を鉛直方向に積算した情報を有し、本研究の結果は深さ毎に横方向の情報を有する事から三次元イメージの取得に適していると考えている。また、これらの成果をまとめ速やかに公表する。
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Causes of Carryover |
年度内調達予定であった水中ケーブルの納品遅れによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該物品が納品され次第、執行する。
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