2018 Fiscal Year Research-status Report
自然資源採取・利用活動のアーカイブ化と地域における活用
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16K21003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 暖生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10450214)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民俗知 / 社会知 / 生業複合 / 資源の持続的利用 / 地域活性化 / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
東北地方の自然資源採取活動を記録した映像を活用して、資源採取・利用に関する民俗知のあり方を考察した結果を、論文および編著書(印刷中)において発信した。中でも、採取活動において競合する他者、および贈与や分配を通じて触れるであろう他者の振る舞いや言動に関する知識(社会知)が、持続的な資源利用の点から無視できないことを指摘した点は、従来の学説に新たな知見を加えるものとして重要である。 コアサイトとなる山中湖村では、植物栽培にも対象を広げ、映像記録を収めることができた。 北陸地方のフィールドにおいて、一連の資源採取および利用過程を映像記録に収め、地域振興を担う現地協力者と共有し、現地協力者とともにその記録の活用方法を検討した。山林資源の活用を図る立場からは、「コツ」が必要とされる加工過程や、品質を高めるような採取方法を地域住民に周知する媒体として映像記録が有効であることが示唆された。一方で、対外的な情報提供は、資源の過剰採取を招く懸念も大きく、さらに検討を進める必要がある。 南九州地方の資源採取について、本格的な現地調査を実施することができた。特に、焼畑が現存する地域において、焼畑休閑林と山菜採取の関連性があること、またそれに関する民俗知が存在していることを明らかにしたことは、重要な成果である。その一部は共著書(印刷中)の中で紹介をした。また、地域の教育行政に従事する方と、次世代への教育に山野の資源採取・利用をコンテンツとして盛り込むことの意義と可能性について意見交換を行った。引き続き、地域内の次世代を情報の受け手と想定した記録方法が検討課題として浮かび上がってきた。 日本全国で利用されてきた採取資源(植物・菌類)に関する地方名称のデータベース作成に取り組んだ。こうしたデータベースやその他研究成果、映像記録を一般にわかりやすく発信するウェブサイトの構築について情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、予定していなかった共編著書、共著書(ともに印刷中)、事典編集(作業中期段階)、依頼論文執筆の作業のため、本研究に十分なエフォートを割くことができなかった。このため、当初計画していた、研究成果の公開・発信(Webページの作成)の着手が次年度にずれ込む見込みとなっている。 福井県のカウンターパートにおける山林資源活用の事業化が2018年度に試行段階として始まったものの、本研究で設定した課題を検討するにはいたっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、無料もしくは安価にウェブサイトで全国データベースやその他研究成果、映像記録を公開する方法について、また、取り扱うべき内容を倫理の観点から検討した上でウェブサイトを開設する。 福井県のカウンターパート、宮崎県のカウンターパートと密に連絡を取り、現地訪問が叶わない場合でも記録の活用方法について着実に検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者は、当初予期されていなかった書籍編著業務3件、依頼論文1件の執筆に携わることになり、エフォートをそちらに割かざるを得なかった。このため、当初計画していた、研究成果の公開・発信(ウェブサイトの作成)の着手が次年度にずれ込む見込みとなった。また、計画にあった、現地活動者との検討作業は、現地でのプロジェクト進行状況から次年度実施が適切な状況となっているため、この作業を2019年度で実施することとした。 2019年度はウェブサイト公開および福井県のフィールドでの検討作業に予算支出を最優先することにし、南九州での検討作業はメール等を通じた情報交換および、自己資金での来訪による検討作業を予定する。
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