2017 Fiscal Year Research-status Report
事業所間の生産技術の異質性と製造業の生産性成長率に関する実証分析
Project/Area Number |
16K21004
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
鈴木 通雄 一橋大学, 経済研究所, 特任准教授 (40580717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生産性 / 生産関数 / 生産技術の異質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、引き続き、事業所レベルの生産関数の同定、推定の問題と日本の製造業の集計生産性について共同研究を行った。前者については、生産投入要素の一つである労働投入量に関して、従業員数以外に労働時間やその構成が異なることや各期の労働力調整をどのようにモデル化するかについて、共同研究者であるUniversity of British Columbiaの笠原准教授、Schrimpf助教授と種々の検討を行った。
後者の日本の製造業の生産性については、工業統計調査を用いて行った集計生産性成長率の要因分解の結果をRIETIディスカッションペーパーにまとめて公表した。(Kasahara, Nishida, and Suzuki (2017)"Decomposition of Aggregate Productivity Growth with Unobserved Heterogeneity," RIETI Discussion Paper Series 17-E-083) 本研究は、同一産業内での事業所間の生産技術の異質性が集計生産性成長率の要因分解にどのような影響を与えるかについて定量的に分析した。主な結果は以下のとおり。中間財費・売上高比率の分散が大きく、生産技術の異質性の度合いが高いと考えられるニット製外衣製造業と自動車部分品・附属品製造業において、生産技術の異質性を考慮しない場合、特に、中間財の再分配による集計生産性成長率の測定値が、解釈が難しいほど極端な値を取ることがあるが、異質性を考慮するとそれらの問題は大きく緩和される。その結果、例えば、ニット製外衣製造業において、バブル後の1992年から1997年にかけて、生産要素の再分配による集計生産性成長率は、事業所間の技術の異質性を考慮しない場合は0.4%と正の値であるが、異質性を考慮した場合は-0.5%と負の値となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
製造業の集計生産性成長率の要因分解については、現段階での結果を予定よりも早くディスカッションペーパーにまとめることができた。一方、生産関数の同定、推定の問題については、労働投入のモデル化について、更なる拡張の検討を行なっているため平成30年度に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
同一産業内での事業所間の生産技術の多様性を考慮する場合の生産関数の同定、推定問題について、平成29年度に重ねてきた議論をさらに進め、その成果を公表することを目指す。研究者間でスケジュールを調整し、集まって研究を行える機会をできるだけ多くとるようにする。さらに、作業には理論、プログラミング、データ分析があるので、共同研究者間で主に担当する分野を決めて効率的に分析を進めることができるように留意する。
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Causes of Carryover |
研究成果について海外の研究者にコメントをもらうため、国際学会で発表する予定であったが、本年はUniversity of British Columbiaの笠原准教授、Schrimpf助教授との生産関数の同定、推定に関する共同研究を進めることに集中した。平成30年度は、積極的に国際学会に参加して研究発表をする予定であり、そのための出張費に使用する予定である。さらに、当初の計画通り、論文の英文校閲費も予定している。
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Remarks |
以下のセミナーでKasahara, Nishida, and Suzuki (2017)"Decomposition of Aggregate Productivity Growth with Unobserved Heterogeneity"を発表した。DSGE Workshop(専修大学、5月13日)、応用経済学ワークショップ(慶応大学、9月22日)、現政研セミナー(早稲田大学、10月17日)
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