2016 Fiscal Year Research-status Report
原子状水素を用いた希釈窒化物混晶への水素修飾とN-H結合の制御
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16K21007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 直也 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (20770788)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 希釈窒化物半導体 / III-V族化合物半導体 / 窒素水素結合 / 太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では申請者らのグループが開発した不純物含有の少ないGaInNAs半導体試料に対し意図的に水素付加することによって、従来研究では困難であった外因不純物の影響をなくし、GaInNAs結晶中に形成される窒素水素結合と半導体物性との相関を実験的側面から評価することを目的としている。 本年度は分子線エピタキシー法により製膜したGaInNAs単接合太陽電池試料への水素添加条件を変化させることにより、水素添加量と太陽電池特性との相関について検討した。その結果、(1)水素添加プロセスの温度と水素混入量の相関、および(2)水素混入量と光キャリア収集効率との相関関係が得られた。さらに、(3)窒素雰囲気下でのアニールによる水素脱離と、それに付随した光キャリア収集効率の改善効果について明らかにした。これらの結果は結晶中への水素混入に起因するキャリア濃度の増加を示唆しているものと考えられる。 GaInNAs混晶中の窒素-水素(N-H)結合を調べるため当初予定通りフーリエ変換赤外分光評価装置を導入した。評価上必要となる試料構造要件について検討を行い、試料構造設計への指針を得た。また、GaInNAs製膜時の原子状水素供給において、成長温度および窒素組成が水素混入量に対して特に大きく影響を及ぼすパラメータであることを明らかにした。次年度は、上記の指針を基にGaInNAs試料の赤外吸収スペクトルを評価解析し、水素混入量との関連を詳細に調べる。また、電気的、光学的物性との相関についても検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子線エピタキシー法により製膜したGaInNAs混晶への水素の添加および脱離手法を確立でき、さらに太陽電池特性におけるキャリア収集過程の考察とも一致する結果が得られている。今年度導入したフーリエ変換赤外分光評価において、評価上必要となる試料構造設計については完了しており、また水素添加量の制御に関連する製膜パラメータに関しても指針が得られていることから、この点に関して次年度初期段階に評価が完了できると考えている。また、電気的、光学的評価に関しては保有システムにおいて問題なく評価可能である。よって達成度は概ね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
GaInNAs薄膜試料の作製、並びに赤外吸収スペクトル評価を引き続き進める。製膜条件を制御することにより水素添加量を増加させ、2桁程度の幅で大きく変化させた試料シリーズを作製、評価する。また、実施計画に沿って電気的、光学的測定を行い多面的にN-H結合の物性解明を進める。
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Causes of Carryover |
装置選定時に、取扱いメーカーの割引キャンペーンのタイミングで当初予定よりも低価格で装置調達が出来たため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初実施予定に加え、水素添加量を大きなレンジで変化させるための条件を決定するため外注測定(SIMS等)を追加する。
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