2016 Fiscal Year Research-status Report
占領期・高度成長期・戦後後期の展示空間に関する研究
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16K21010
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
辻 泰岳 日本女子大学, 家政学部, 助教 (10749203)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ディスプレー / スクリーン / イベント / パビリオン / 日本館 / アヴァンギャルド / 冷戦 / 対外文化政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度にはまず、国立近代美術館 (現:東京国立近代美術館)で開催された展覧会の会場設計について、明治美術学会で口頭発表した。戦争直後から1950年代には、新たに登場する近代美術館の活動とデパートメントストアや画廊、公園等を利用する芸術運動とが入り交じっていた。ただしこうした芸術運動に関与したのは美術家に限らず、たとえば丹下健三などの建築家も彼らと共に「芸術の総合」という標語を掲げて展覧会や博覧会の会場設計等に携わっていた。そこで本発表ではこうした関与の一端を明らかにするために、国立近代美術館と一連の「現代の眼」展が、建築や都市に関わる人々が参加した戦後の展覧会や博覧会に関する多くの事例の中に位置づけられることを示した。 次に1967年にモントリオールで開催された万国博覧会に関する成果を発表した。日本の1960 年代は一般的に東京オリンピック(1964 年)や大阪万博(1970 年)などを経て人々の共同性が揺れ動く時代として紹介されることが多いが、この間に開催されたモントリオール万博は1960年代の日本の動向を概観する際にもこれまであまり注目されてこなかった。そこで本研究ではカナダ建築センター(CCA)に所蔵されている図面や写真などを用いて、この博覧会のために芦原義信や豊口克平らが設計した日本館を、冷戦下の東西諸国によるパビリオンと比較した。またこのモントリオール万博で話題を集めた環境芸術や映像の展示が、3年後に開催を控える大阪万博に与えた影響について考察した。この成果については2016年9月に東北大学で開催されたアジアの建築交流国際シンポジウム(ISAIA 2016)で発表した。またこれを加筆修正した論文がローマで開催された「Architettura Invisibile」展の展覧会カタログに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度には事例とする展覧会や博覧会に関する調査とその成果の発表を通じて、当初の計画通りに研究を進めることができた。またその過程でニューヨークのアーカイブズ等で文書や図面、写真などの収集をすすめつつ、並行して関係者への聞き取り調査(オーラル・ヒストリー)を実施した。以上の理由より、当初の計画通りの進展があったと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はひきつづき東京を拠点として資料の収集や整理を行うとともに、国内外の学会で口頭発表と論文の投稿を行う。具体的には2017年10月に天津大学で開催される東アジア建築文化国際会議(EAAC 2017)で成果を発表することを予定している。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた調査が先方の都合で延期になったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
延期した調査を平成29年度に実施する。
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