2018 Fiscal Year Research-status Report
児童生徒の長所・資源に着目した生徒指導モデルの構築
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16K21021
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
伊藤 秀樹 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (80712075)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生徒指導 / スクールワイドPBS / ほめる / 認める / 長所基盤アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、児童生徒が有する長所・資源に着目した生徒指導のモデルを構築し、その可能性と限界に関して検討を行うことにある。そうした目標の達成に向けて、本年度は以下の2つの研究を実施した。 1点目は、児童生徒が有する長所・資源に着目した生徒指導の実践の1パッケージである、スクールワイドPBSについての文献調査を通した批判的検討である。具体的には、スクールワイドPBSの実践が、ゼロトレランスをはじめとしたこれまでの統制的な生徒指導よりは倫理的に望ましいものである一方で、①保護者の養育困難が生じる背景への支援という視点が欠落する危険性、②マイノリティの立場にある子どもが求めるニーズが尊重されず学校からの排除につながる可能性、という2つの留意点をもちうることを示した。この研究成果は『子ども社会研究』第24号の特集に論文として掲載された。 2点目は、児童生徒が有する長所・資源に着目した生徒指導の理念と運用に関する、小学校教員・元教員16名へのインタビュー調査である。インタビュー調査からは、第1に、中堅・ベテランの小学校教員の一定数が、教員としてのキャリアを重ねる中で子どもを怒る・叱る生徒指導から、子どもの「よいところ」をほめる・認めることを活かした生徒指導(ほめる・認める生徒指導)へとシフトしていたことが明らかになった。第2に、小学校教員たちが、主に「子どもたちがさらにがんばろうと思い、望ましい行動やふるまいが増えていく」「子どもたちに自信がついていく」「クラスの雰囲気が温かくなる」という3つの理由から、ほめる・認める生徒指導を採用していることが明らかになった。これらの研究成果は、教員養成系大学の授業で活用することもねらい、科研費の中間報告書としてまとめ、調査協力者・協力校等に配布を行った。来年度はインタビュー調査の結果により詳細な分析を加え、学会発表・論文執筆を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査については、スクールワイドPBSへの焦点化とその議論のまとめに成功し、児童生徒が有する長所・資源に着目した生徒指導のモデル化に向けて、可能性と限界についての議論のポイントを総体的に理解することができた。また、教員へのインタビュー調査に関しても、計画を上回る人数にインタビューを実施することができ、さらに教員養成系大学の授業でも活用できるような冊子(兼、科研中間報告書)をまとめ上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はインタビュー調査についてのより詳細な分析と成果報告を行っていくが、学会発表と論文投稿の日程をすでに定めており、タイムスケジュールをきっちり管理したうえで研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度の国際会議や地方で開催される国内学会での発表の旅費に予算を残しておくため、今年度は物品購入等による出費を最小限に抑えた。また、次年度も可能な限り教員へのインタビュー調査を補足的に実施していくため、そのための文字起こし費用も残しておくよう配慮した。
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Remarks |
小学校教員を目指す大学生向けの読本として、以下の科研費中間報告書を200部作成・印刷した。
伊藤秀樹,2019,『多様な子どもが前向きに過ごせる学校・学級づくり――小学校の先生方へのインタビューより』,全26ページ.
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