2020 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of a Student Guidance Model that Focuses on the Strengths and Resources of Students
Project/Area Number |
16K21021
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
伊藤 秀樹 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80712075)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生徒指導 / ほめる / 認める / 包摂 / 長所基盤アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、児童生徒が有する長所・資源に着目した生徒指導のモデルを構築し、その可能性と限界に関して検討を行うことにある。そうした目標の達成に向けて、2020年度は第1に、小学校2・3年生の保護者に対するWeb調査を実施し、小学校教員の「ほめる・認める生徒指導」が実際に子どもの学校適応に資するものであるのかについて検討した。分析結果からは、小学校の担任によってほめる指導が積極的に行われている児童ほど、学校に楽しく通っており、気持ちが安定していると保護者が認識している傾向が見出せた。成果については2021年度に論文投稿を行う予定である。 第2に、小学校教員の「ほめる・認める生徒指導」にみられる子どもたちの関係性への包摂がいかなる性質をもちうるものなのかについて、小学校教員・元教員へのインタビュー調査の結果に基づきながら検討した。分析結果からは、「ほめる・認める生徒指導」が、学校生活の中で他の子どもとつながりにくい子どもも含め、学級内のすべての子どもを関係性へと包摂しうる実践であることが示唆された。一方で、「ほめる・認める生徒指導」では日常的な関わりがなく「よいところ」に気づくことができない人々が関係性への包摂の対象として認識されえないという課題も明らかになった。成果については2020年9月の日本教育社会学会第72回大会にて発表を行った。 5年間の成果からは、児童生徒が有する長所・資源に着目した生徒指導が、子どもたちの問題行動を抑制するだけでなく、学校生活・社会生活の中で困難に直面しやすい子どもたちを学級内に包摂し、その規範を社会に広げていくものである可能性が見出せた。一方で、そこでの包摂は一定の条件が課された包摂であるという限界があり、人々の存在価値は「ありのまま」でも無条件に認められるべきだという文化を学校内・学級内に醸成していくことが不可欠であることも明らかになった。
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