2017 Fiscal Year Research-status Report
地域特性を考慮した木材の炭素排出削減効果モデルの開発と将来予測
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16K21023
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
加用 千裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50550183)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 木材利用 / モデリング / 国産材 / 炭素排出削減 / 炭素貯蔵効果 / 材料代替効果 / エネルギー代替効果 / 木製土木構造物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、引き続きモデルの開発を進め、特に炭素貯蔵効果に着目し、国産材の炭素貯蔵量を取り扱う機能を構築した。丸太生産・輸入から地域間を移動し木材製品(建築・家具・土木・紙・板紙)利用に至る木材フローにおいて、国産丸太由来と輸入丸太由来を区別して追跡し、国産丸太由来の木材製品ストック量とその炭素貯蔵量を明示した。木材製品ストック量の推計には、木材フローと寿命関数を用いたが、1970年以降の長期間に渡る木材フローデータを収集・利用することにより、できる限り推定精度を高めた。 また、今後の国産材利用拡大分野として木製土木構造物に着目し、専門家・有識者との研究会により、木杭、木製治山ダム、木質チップ舗装道路、木製防護柵、木製遮音壁における国産材利用可能量を検討した。その上で、開発中のモデルにおいて、これらの土木分野における国産材利用による炭素排出削減効果(炭素貯蔵効果、材料代替効果、エネルギー代替効果)を評価できる機能を追加した。これを用いて、セメント杭から木杭、コンクリート製治山ダムから木製治山ダム、アスファルト舗装道路から木質チップ舗装道路、鋼製防護柵から木製防護柵、コンクリート製遮音壁から木製遮音壁への代替による日本の各地域および日本全体における炭素貯蔵効果および材料代替効果を定量的に明らかにした。同様に、これら木製土木構造物の解体廃棄後に発生する廃棄木材のエネルギー利用による化石燃料代替に伴うエネルギー代替効果も明らかにした。 これらの研究成果をまとめ、学会での口頭発表、講演、査読付き論文を発表し、研究成果を社会に発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度における研究計画をおおむね達成し、査読付き論文および講演による研究成果の発表も行ったため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発したモデルを日本の各地域に適用し、将来推計を行う。将来シナリオは、国内丸太生産、木材製品利用、エネルギー利用といった複数の観点から設定する。林業、木材産業、建築・土木・家具産業、木質バイオマスエネルギー産業への現地調査と専門家・有識者との研究会を行う。それにより得られる情報を参考にして、国内丸太生産は、現状維持、緩やかな伐採増加、日本政府の森林・林業基本計画等のシナリオ、木材製品利用とエネルギー利用は、現状維持、緩やかな利用推進、積極的な利用推進等のシナリオを想定し、モデルへ入力するパラメータを決定する。設定した将来シナリオに沿って日本の各地域における木材の炭素貯蔵効果、材料代替効果、エネルギー代替効果を2050年まで推計し、総合的な炭素排出削減効果を定量的に明らかにする。 また、林業、木材産業、木質バイオマスエネルギー産業分野で世界をリードし、地球温暖化対策の先進国であるオーストリアにおいて、森林・木材の炭素収支に関する多数の研究実績を有する研究機関との国際共同研究を行う。これにより、日本およびオーストリアにおける木材による炭素排出削減効果やその将来予測の比較研究を通して、木材利用による温暖化対策の望ましいあり方を提案する。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度において、本研究における木材の炭素排出削減効果モデルの開発および将来予測について、森林管理・木材利用の炭素収支に関する多数の研究実績を有するオーストリアの研究機関(Institute of Social Ecology)と国際共同研究を遂行する予定であったが、研究協力者の都合により、次年度実施することになった。
(使用計画)次年度の約1カ月間、オーストリアの研究機関に滞在し、国際共同研究を行う予定であるため、「旅費」として適正に支出する予定である。
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Research Products
(9 results)