2017 Fiscal Year Research-status Report
日本の障害者福祉における共創的表現に関する実証研究と理論構築
Project/Area Number |
16K21028
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長津 結一郎 九州大学, 芸術工学研究院, 助教 (00709751)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 芸術諸学 / 社会包摂 / 対話 / マイノリティ / アール・ブリュット / 社会福祉学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はフィールドワークとインタビュー調査による考察を行い、単著にてその成果の一部を発表した。 フィールドワークにおいては、障害/健常のあり方について問いかける演劇作品を制作し、その作品の経緯をふくめ映画にまとめた「マイノリマジョリテ・トラベル」の上映会のフィールドワークを行なった(福井県、高知県、岡山県等)。これらの上映会での参与観察や、その後のアンケートの分析から、社会的包摂の近年の議論における障害者の処遇の問題(特に、社会包摂についてを単に包摂/排除の問題としてだけでなく、障害者の同一処遇/異別処遇の問題としても考える議論)と照らし合わせて検討を試みた。その結果において、障害/健常の境界線を揺るがす作品を見た鑑賞者の反応として、判断の保留という態度が見られたことが特徴的であった。この保留という態度こそが、人々をその後の新しい行動や活動に駆り立てる原動力になるものであると推察される。これらの成果は日本文化政策学会、共創学会において学会発表を行なった。 インタビュー調査においては、以前よりフィールド先にしていた義足のダンサーへのインタビュー調査を行なった。東京2020オリンピックに向けて障害者芸術が全国的な振興を見せているなかで、研究代表者はこれまでの研究的見地から、障害者やその表現を消費的に扱う状況にあると考え、全国的に活躍するダンサーへのインタビューをもとに当事者からの視点を考察することを試みた。これらの成果は、単著「舞台の上の障害者:境界から生まれる表現」に補章としてまとめた。 またこれらの研究活動を研究室ウェブサイトに定期的に掲載している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールドワークを通じて、障害のある人をめぐる共創的表現のありようが、「判断の保留」という態度について考察することができた。また、これまでの研究成果について単著にまとめることができ、これまでの研究成果とあわせ、それらを広く周知することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度となるため、一昨年度より行なってきたテキストマイニング的分析を論文にまとめることを目指す。また、昨年度のフィールドワークを通じて現れてきた「判断の保留」という見地をさらに深めるため、実際に障害のある人の作品を媒体にさまざまな活動を行なっている団体への参与観察を試みる。これらの成果は論文や書籍にまとめる予定である。
|
Research Products
(4 results)