2017 Fiscal Year Research-status Report
転動体の接触剛性を考慮した工作機械送り駆動機構の高度動解析システムの開発
Project/Area Number |
16K21036
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
酒井 康徳 東京工業大学, 工学院, 研究員 (70774769)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 工作機械 / 転がり機械要素 / 振動減衰性 / Hertz接触 / 有限要素解析 / 周波数応答 / 位置決めステージ / 非線形振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から実施している転がり案内キャリッジ内部に組み込まれている転動体の動ひずみ測定により,各転動体の負荷分布と接触剛性,接触減衰を推定することが可能となった.本研究の最終目標である転がり案内された送り駆動系の動特性を高精度予測を実現するためには,転動体とレールとの間で生じる接触剛性・減衰をモデル化し,転がり案内単体及び送り駆動ステージの動解析モデルに組み込む必要がある.そこで,本年度は,実験的に得られた転動体接触部のミクロな剛性・減衰特性を活用することで,転がり案内単体の動解析モデルの構築を行った.具体的には,下記の事項について検討を行っている. 1.転がり案内の転動体接触部における接触減衰のモデル化 動ひずみのインパルス応答から同定した接触剛性,接触減衰は,転動体荷重に対して非線形な挙動を示す.そこで,それを対数関数で近似モデル化し,それを組み込んだ2自由度振動系による動解析を実施した.その結果,転動体荷重の大きさによって振動応答が変化することが明らかとなった. 2.転動体負荷分布理論への慣性項と減衰項の導入 従来から転がり案内内部に組み込まれている転動体の負荷分布を算出可能な転動体負荷分布理論と呼ばれるものが存在する.しかし,慣性項及び減衰項は考慮されておらず,静的な状態での負荷状況しか予測できなかった.そこで,従来の負荷分布理論に上記1で使用した剛性,減衰モデルを組み込むことで,転がり案内単体の動的状態における負荷分布の変動を解析可能とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り,転動体の接触剛性,接触減衰の非線形性を考慮したモデル化及びそれを組み込んだ振動解析手法の構築できた.さらに,従来の転動体負荷分布理論に慣性項,減衰項を組み込むことで,動的状態における転がり案内の転動体負荷分布を計算する方法を構築している.このため,次年度も予定通り研究を進展することで,将来の発展が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに,転がり案内単体の動特性(周波数応答)を予測する理論の構築ができた.一方で,予圧条件や負荷条件によっては,実験と理論解析とで固有振動数および応答振幅に差異が生じることも確認している.送り駆動系の動解析へ応用するためには上記の差異が生じる要因を明らかにし,それを補正することが必要となる.上記を踏まえ,次年度は下記の事項を検討する. 1.与圧条件・負荷条件による応答の差異の検証:モーメント,荷重のみが作用する状態を模擬して転がり案内単体の加振実験を行い,これまでに構築した転動体の動ひずみ測定方法を用いて転動体の接触剛性・減衰の詳細な分布を実験的に明らかにする.この結果と理論解析の結果とを比較することで,どのような条件で実験と理論との差異が大きくなるのかを検討する.その後,それを補正する補正項を理論式に導入することを考えている. 2.送り駆動テーブルの動解析:転がり案内キャリッジを2個,4個組み込んだ送り駆動テーブルを構築し,実験により動特性を測定する.このとき,負荷条件が異なるいくつかの条件で加振を行い,その影響も検討する.さらに,動的な状態に拡張した負荷分布理論を応用することで送り駆動テーブルの周波数応答の解析を実現する.実験と理論とを比較することで,本手法が送り駆動テーブルの動解析に有効かどうかを検証する. 3.これまでの研究成果の整理と今後に向けた方策の決定:次年度は本研究課題最終年度となる.そこで,これまでの成果を整理し,本課題終了後の転がり機械要素並びに工作機械の設計技術に資する新たな発展研究方策を定める.
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Causes of Carryover |
本年度の予算の大部分は予定通り研究で必要となる物品購入に充当している.しかし,想定よりも安価に購入できた消耗品が存在したため,わずかに残額が生じた.これについては,次年度の研究で必要となる消耗品等の購入に充当する.
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Research Products
(7 results)