2016 Fiscal Year Research-status Report
時間的・空間的に相互作用をもつ格子確率モデルの極限定理の研究
Project/Area Number |
16K21039
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
竹居 正登 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60460789)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パーコレーション / ランダムウォーク / セルオートマトン / 量子ウォーク |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い,2次元Isingモデルにおけるパーコレーションや強化型ランダムウォークの極限挙動を柱として時間的・空間的に相互作用をもつ確率モデルの研究を行なった. パーコレーションに関する極限定理の精密化やはしご型格子の上の強化ランダムウォークの極限挙動に関してはまだ研究の準備段階の域を出ないが,一方その途上で,本研究課題と関連する問題についていくつかの成果が得られ始めている. 2次元Isingモデルのパーコレーションについては,臨界点における正方形領域のスパンニング・クラスターの性質を調べ,独立なパーコレーションの場合に知られている性質のうち基本的な部分を一般化することができている.頂点強化型ランダムウォークについては,完全2部グラフの上の頂点強化型ランダムウォークの研究で進展があり,完全グラフ上のモデルとは挙動が大きく異なることが分かってきている.これらの研究については,さらに推し進めて次年度以降に成果を発表する. パーコレーションと関連する副次的テーマとして考察を進めてきた(確率的)セルオートマトンに関しては今年度2件の原著論文を発表することができた.ひとつはパスカルの三角形における剰余と関係する1次元線形セルオートマトンに対する極限分布の存在に関する結果であり,もうひとつは種々の1次元線形セルオートマトンに加法的なエラーを付加したときのエルゴード性に関する結果である.これらの結果は日本語の解説論文としてもまとめた. 過去の履歴に依存する確率過程の問題と関連した副次的テーマである量子ウォークについては,今年度1件の原著論文が出版された:最も基本的で重要なアダマール・ウォークをサイクルの上で考えたとき,どのような周期性が生じうるかを完全に解明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パーコレーションの問題における極限定理の精密化や辺強化型ランダムウォークの極限挙動の研究では予想以上の困難があり,研究の進捗が計画よりもやや遅れている.前者については,独立なパーコレーションの場合の極限定理の証明を再度考察しなおすなど基本に立ち返った研究を行なった,また,後者については頂点強化型ランダムウォークにも視野を広げ基本的な手法の見直しを進めた.その結果,次年度の研究につながる考察と,関連する課題についていくつかの成果が得られている. 一方,副次的テーマである(確率)セルオートマトンや量子ウォークについては成果を順調に発表できている. 以上のことから,総合的に判断して「おおむね順調に進展している」と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
独立なパーコレーション及び2次元Isingモデルのパーコレーションにおける極限定理について,本年度の積み上げをさらに推し進め新たな成果を得ることを目指す.2次元Isingモデルのファーストパッセージパーコレーションと並行して,2次元格子のランダムな点彩色に関するファーストパッセージパーコレーションの問題も考察する必要が出てきている.強化型ランダムウォークに関しても,はしご型格子の上のモデルに関して本年度調べたことをさらに深め新たな知見を求めたい.木グラフ上のモデルについての精密な極限定理を研究することも重要である. これらの研究を推進するために,最新の数学書を購入し情報を収集する必要がある.また,パーコレーション・強化ランダムウォークについて活発に研究している国内外の研究者を訪問・招聘して意見交換を行なう.得られた成果については主に国内の研究集会において発表し,参加者と討論することでさらなる深化を目指す.
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Causes of Carryover |
研究計画遂行のため最新の数学専門図書を必要としているが,2017年3月までに発行予定で購入を計画していた洋書に未刊行となったものがあり,確保していた額だけ余りが生じたため.また,本研究計画の推進の上で重要と思われる書籍が2017年4月前後に相次いで刊行される予定ときき,それらの購入資金をあらかじめ確保しておくことで貴重な研究費を有効に活用できると考えたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定の数学専門図書が発行され次第入手し,速やかに研究計画遂行に役立てる.
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