2017 Fiscal Year Research-status Report
薬剤誘発性糖尿病におけるPXR/SGK2 シグナル経路の機能的役割の解明
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16K21055
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
齊藤 紗希 (後藤紗希) 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (60756609)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 核内受容体 / 脂肪酸のb酸化 / 遺伝子発現制御 / ヒト肝細胞 / 転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓に高発現する核内受容体 pregnane X receptor (PXR) は異物代謝制御に加えてエネルギー代謝制御への関与が示唆されている。しかし、ヒトにおいてその詳細は明らかではない。代表者はこれまでの研究で、ヒト肝がん細胞において活性化した PXR が 細胞内シグナル因子 serine/threonine kinase 2 (SGK2) と協調的に作用して肝糖新生を制御することを明らかにした。本研究は、PXR/SGK2 シグナル経路のエネルギー代謝における機能的重要性をさらに明確化するために、脂肪酸のβ酸化制御に焦点を当ててその機能的役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、平成28年度までの検討で明らかにした ShP51 細胞 (ヒト PXR を安定的に発現させたヒト肝癌細胞由来 HepG2 細胞) における脂肪酸のβ酸化律速酵素 carnitine palmitoyltransferase 1A (CPT1A) およびβ酸化関連酵素 acyl-CoA synthetase long-chain family member 1 (ACSL1)の simvastatin (SIM) 処置依存的な mRNA 発現量の増加を確認した。また、siRNA を用いたノックダウン実験により、SIM 処置による CPT1A mRNA の発現量の増加に PXR と SGK2 が促進的に機能していることも確認した。さらに、クロマチン免疫沈降法により、ShP51 細胞において CPT1A 遺伝子上流領域に PXR と SGK2 が SIM 処置依存的に結合するサイトを同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属機関変更に伴い、実験環境の整備や実験条件等の再検討が必要となった。平成29年度に実施した実験結果から、平成28年度までの検討で明らかにした ShP51 細胞における PXR と SGK2 を介したスタチン誘導性の CPT1A の遺伝子発現制御の結果を同様に確認し、再現性を得た。したがって、平成29年度に予定していた PXR および SGK2 を介したスタチン誘導性の ACSL1 の遺伝子発現制御に関する解析を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)スタチン誘導性の CPT1A mRNA の発現が脂肪酸のβ酸化を亢進させるかについて調べるために、SIM 処置した ShP51 細胞を用いてミトコンドリアの脂肪酸酸化による酸素消費を解析する。 (2)スタチン誘導性の ACSL1 遺伝子発現メカニズムを PXR および SGK2 に焦点を当てて明らかにする。 (3)スタチン誘発性糖尿病発症における個人差が PXR および SGK2 に起因しているかについて検討するために、SIM 処置により CPT1A および ACSL1 遺伝子の発現誘導レベルに差異のあるヒト初代培養肝細胞をスクリーニングして、PXR および SGK2 遺伝子のコード領域に焦点をあてたシークエンシング解析を行い、遺伝子多型との関連を解析する。 (4) これまでに得られた結果を学術誌にて報告する。
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Causes of Carryover |
年度途中における出産・育児による研究中断のため次年度以降の使用額が生じた。未使用額はヒト初代培養肝細胞や試薬などの消耗品に充てる予定である。その他、研究成果発表のための論文掲載料及び国内外での学会参加旅費に充てられる。
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Research Products
(2 results)