2018 Fiscal Year Research-status Report
臨界型関数不等式に付随する楕円型偏微分方程式の変分解析
Project/Area Number |
16K21056
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
和田出 秀光 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (00466525)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 関数不等式 / 変分解析 / 有界変動関数 / Trudinger-Moser不等式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の1つは、Trudinger-Moser型不等式に付随する最大化問題を考察し、その最大化関数の存在、非存在について考察することである。Trudinger-Moser型不等式は臨界Sobolev空間を特徴付けるSobolevの不等式の一種であるが、平成30年度においては劣臨界Sobolev空間におけるSobolev不等式に付随する最大化関数を考察し、その最大化関数の存在、非存在について新たな知見を得ることができた。特に、大阪大学の石渡通徳氏との共同研究 "M. Ishiwata, and H. Wadade, On the maximizing problem associated with Sobolev type embeddings under inhomogeneous constraints, Applicable Analysis (in press)" においては、一般にcompactnessが欠如した汎函数に付随する最大化問題を考え、同問題に含まれる種々の指数に応じてcompactnessが復活する場合とそうでない場合があり得ることを明らかにした。また、さらに劣臨界の端に位置する問題についても考察し、この場合は通常のSobolev空間を用いると、 最大化関数は常に非存在となることを証明した。しかしながら、この場合においては、Sobolev空間をいわゆる有界変動を持つ関数族であるBV関数の関数空間に置き換えることにより、通常のSobolev空間と同様の議論が可能となり、同問題に現れる指数に応じてcompactnessの復活があり得ることを証明した。なお、この内容は大阪大学の石渡通徳氏との共同研究であり、現在査読付き学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の1つはTrudinger-Moser型不等式を1例にするような臨界型Soboelv不等式に付随する変分問題を考察し、同問題に対する最大化関数の存在、非存在を考察することである。実際、平成29年度においては、論文 "N. Ikoma, M. Ishiwata, H. Wadade, Existence and non-existence of maximizers for the Moser-Trudinger type inequalities under inhomogeneous constraints, Math. Ann. (in press)" において、種々のパラメータを付したTrudinger-Moser型不等式を考察し、それらのパラメータに応じて対応する最大化問題の最大化関数の存在、非存在が起こり得ることを明らかにした。また、これらの研究成果を踏まえ、平成30年度における主要な研究テーマとして、有界変動関数族いわゆるBV関数族に関する変分問題を考察した。BV関数空間は非回帰性Banach空間であることが知られており、Trudinger-Moser型不等式を考察するSobolev空間と異なり、変分解析を直接適用することは困難である。このことを踏まえ、平成30年度以降の研究課題の1つはこの非回帰性Banach空間上において変分解析がいかに適用可能であるかを考察し、非回帰性Banach空間上の関数不等式に有用な変分解析を構築することを目標とした。結果、ある種のscaling propertyを有する汎函数に付随した変分問題に関しては、土台となる関数空間がBV関数空間のような場合であっても、最大化化関数の存在を議論する上での方法論を構築することに成功した。以上の研究成果を鑑み、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度においては、臨界型関数不等式の1つであるTrudinger-Moser型不等式について、その最大化関数の存在、非存在について考察し、新たな知見を得ることに成功した。また、Trudinger-Moser型不等式の臨界に位置する不等式として、BV(Bounded variation)関数上のSobolev型不等式が現れるが、同不等式に付随する最大化問題に関しても同様の変分問題を考察し、ある種のscaling propertyを持つ汎函数に対しては同問題に対してその最大化関数の存在、非存在を考察する方法を見出すことに成功した。しかしながら、BV関数空間は非回帰性Banach空間であることが知られており、Trudinger-Moser型不等式の土台となるSobolev空間と異なり、変分解析を直接適用することは困難である。このことを踏まえ、平成31年度の研究課題の1つは、非回帰性Banach空間上において変分解析がいかに適用可能であるかの一般論の構築を試み、非回帰性Banach空間上の関数不等式に有用な変分解析という観点において何らかの貢献をすることを目標としたい。しかし、同研究課題は相当な困難に直面することが予想されるが、具体的な研究推進策として、まずは非回帰性Banach空間の1例であり、関数不等式に頻出するLebesgue可積分関数の集合であるL-1空間において、同空間の有界列がもつ特徴付けをいかに与えられるかどうかという問題からスタートしていきたい。このような具体的な非回帰性Banach空間に対して関数解析がどこまで通用し、非回帰性から来る困難を明確にすることにより、少しずつであるが、元の問題である、非回帰性Banach空間上の関数不等式に有用な変分解析の構築に向けて着実に研究推進を図ることに尽力したい。
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