2016 Fiscal Year Research-status Report
主嗅覚系を介した性行動を引き起こす神経回路形成メカニズムの解明
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16K21062
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
井ノ口 霞 福井大学, 学術研究院医学系部門, 学術研究員 (90632349)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 行動解析 / 扁桃体 / 神経回路 / 嗅覚 / 性行動 / 軸索ガイダンス / 情動 |
Outline of Annual Research Achievements |
主嗅覚系で受容されることが知られているフェロモン物質は嗅球の腹側領域を活性化させている。本研究では主嗅覚系を介した性行動を引き起こす神経回路メカニズムの解明を目指している。これまでの研究により嗅球腹側の二次神経細胞では軸索ガイダンス分子であるNeuropilin2が発現していることがわかっている。遺伝学的手法によりNeuropilin2発現するサブタイプの二次神経細胞の投射パターンを可視化すると、扁桃体内側核に投射していることが明らかになった。扁桃体内側核は性行動に関わることがわかっており、これまでに主嗅球からの投射は知られていなかった。平成28年度においては扁桃体内側核への主嗅覚系からの投射がNeuropilin2 陽性の嗅球腹側細胞特異的かを検証するため、逆行性ウイルスである改変型狂犬病ウイルスを扁桃体内側核にinjectionし、標識された二次神経細胞のプロファイルを調べた。また、Neuropilin2 が細胞自律的に作用しているのかを明らかにするため、二次神経細胞特異的にNeuropilin2 ノックアウトマウスを作製し、投射様式を観察した。逆行性ウイルスinjectionの結果、扁桃体内側核への主嗅球からの投射はほぼ腹側嗅球からであることが明らかになった。さらに二次神経細胞特異的Neuropilin2ノックアウトマウスでは、扁桃体内側核への投射が著しく減少していた。これらの結果から、主嗅球で受容されるフェロモン物質の情報は扁桃体内側核へと伝えられていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、二次神経細胞の主嗅覚系腹側から扁桃体内側核への投射に関わるとされるNeuropilin2の遺伝子改変動物を用いた機能解析までを年度計画としていた。実際にNeuropilin2のコンディショナルノックアウトを用いた解析により、この分子が嗅球腹側から扁桃体内側核への軸索投射に必要であるこという結果を得られている。 これに加えて、Neuropilin2の反発性リガンドであるSemaphorin3Fが扁桃体内側核周辺で発現していることを見出した。さらに、Semaphorin3Fのコンディショナルノックアウトマウスの解析を行い、Nrp2の遺伝子組み換えマウスと同様の結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は嗅球腹側から扁桃体内側核への神経回路が、マウスの行動にどのような影響を与えるかを明らかにする。先行研究から、扁桃体内側核を外科的に削除したマウスでは性行動に異常が見られることがわかっている。また、主嗅覚系のシグナル伝達を阻害したCNGA2 ノックアウトマウスの雄は、雌の匂い嗅ぎ行動やマウンティング行動などの性行動を示さなくなることが報告されている。嗅球腹側から扁桃体内側核への投射がほとんどなくなっているNeuropilin2のコンディショナルノックアウトマウスにおいて、匂い嗅ぎ行動などの性行動にどのような影響が見られるかを解析する。さらにDREADDSシステムを用い嗅球腹側から扁桃体内側核への回路のみを抑制または活性化させたマウスにおいても同様に行動解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、Neuropilin2のリガンドとして知られているSema3B、Sema3C、Sema3Fのノックアウトマウスを解析し、どのリガンドがNeuropilin2発現僧帽細胞の回路形成に関与しているかを調べる予定であった。そのためにマウスの購入が必須であったが、Sema3Fコンディショナルマウスの解析によってNeuropiln2の僧帽細胞の投射異常が検出されたため、他のリガンド候補の解析よりも、Sema3Fを用いてより高度な研究成果を得るために新たな知見の分析を行う研究計画の変更が必要になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Neuropiln2発現僧帽細胞の扁桃体への投射異常が社会行動へどのような影響が見られるかを解析するための行動実験装置の購入および解析ソフトの購入が必要である。嗅球腹側と扁桃体を繋ぐ回路のみをDREEADを用いて抑制または活性化した時の行動観察を行うことで、特定の回路の重要性を示すことができる。そのためのウイルス作成、試薬の購入に使用する。
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