2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K21083
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
尾崎 智也 名古屋大学, 医学系研究科, 研究員 (40710588)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸プロテオグリカン / 糖鎖 / dystrophic growth cone / オートファジー中断 / 脊髄損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、損傷し、伸長不全に陥るまでの神経細胞、特に軸索における細胞内機構を洞察するものである。中枢神経の損傷部位では、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの産生亢進が起こり、細胞外に蓄積する。プロテオグリカンにより、再伸長を試みる神経軸索は、伸長を阻害され、先端にはdystrophic growth coneと呼ばれる異常な形態を見せる。我々は、その形成にオートファジーの中断、それに付随するオートファゴソームの蓄積が関与することを見出した。本研究では、dystrophic growth coneの形成メカニズムに、どのようにオートファジー中断が関わるのか明らかにすることを目的として調査進めてきた。本研究の完成は、脊髄損傷など損傷神経を治療する手立てとして、オートファジーを標的することを提案するものになる。 これまでに、dystrophic growth cone内部のオートファゴソームの蓄積が、マウスを用いたin vivo実験系においても観察されることを確認できた。また、この軸索先端部でのオートファゴソーム蓄積は、オートファゴソームとリソソームが融合しない、つまりオートファジーの中断が原因であると考え、この2つの細胞内小胞の融合装置として働くSNAREタンパク質の遺伝子ノックダウンがdystrophic growth coneの表現型を惹起し得るか検証した。その結果、Syntaxin17、VAMP8、SNAP29のうち、少なくとも1種類のSNAREタンパク質の遺伝子ノックダウン下において、軸索伸長は阻害され、先端部内部でのオートファゴソーム蓄積が引き起こされることを観察し、オートファジー中断がdystrophic growth cone形成に深く関わることを支持するデータを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスを使ったin vivo実験系での検証では、dystrophic growth cone内部にオートファゴソームの蓄積が引き起こされることが観察できた。また、SNAREタンパク質の遺伝子ノックダウン実験では、dystrophic growth coneの表現型を誘導することができている。これらは、申請書の研究計画通りである。 また、本研究では“糖鎖→受容体→オートファジー中断”という細胞内イベントこそが、dystrophic growth cone形成の原因であることを立証したい。そのために、コンドロイチン硫酸の受容体であるRPTPσ活性化が、オートファジー中断を引き起こすという仮説を検証してきており、仮説通り、RPTPσ活性化はオートファジー中断の引き金となることが確認できた。 さらに、dystrophic growth cone形成および解除に必要な糖鎖構造の決定を目的として、台湾academia Sinicaとの国際共同研究を進めてきた。in vitroレベルでは、どの糖鎖構造が有効か決まりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書にも書いたように、今後は、動物実験が主になっていく。in vitro実験系で、dystrophic growth coneが解除され、プロテオグリカンの濃度勾配を越えて伸長できるレスキュー条件を探索する。見出したレスキュー条件について、脊髄損傷マウスを作製し、治療効果があるか否か動物実験において検証していく。
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Causes of Carryover |
所属研究室において、いくつかの必要試薬がすでに購入されていたため、本研究課題での実験に流用できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験が増えることになることが予想される。用いる動物の数は最小限に抑えることに努めるが、動物購入費に重点的に使用する予定でいる。
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