2016 Fiscal Year Research-status Report
運転における認知・判断・操作特性データベースの構築と個別化自動運転の実現
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16K21090
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥田 裕之 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (90456690)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 運転行動解析 / システム同定 / 判断モデル / 意図推定 / ロジスティック回帰 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究の目的は,大きく分けて①大規模行動信号の収集,②認知,判断,操作統合型行動モデルの同定手法の確立,の二つである. まず,②については,従来までの研究で,ハイブリッド動的システムの考え方に基づいて,人間の行動を複数に分割し,そのモード遷移,すなわち判断を判別式として,各モードでの動的な入出力関係,すなわち操作を線形モデルとして構造化し,それぞれのパラメータを推定する,という手法を提案し,その応用を検討してきた.本研究では,これらに加えて,人間の行動における「認知」を,認知科学的な視点とは異なる,行動信号処理の視点から,ボトムアップに推定する試みとして,観測した行動データのみから,「判断」に相当する判別式においてどのような情報が取捨選択され,どのような感度にて着目されているか,を,ロジスティック回帰モデルとそのモデル選択技法を使うことで実現する方法を確立した. 具体的には,高速道路における追い越し,追い抜きをしつつの走行を,追従,追い越し,復帰,などの5つの小さなタスク(モード)に分割し,それぞれのモードが遷移する条件をロジスティック回帰モデルを使って表現した.そのうえで,このモデルにおいて,パラメータの有意検定を活用することで,モード遷移条件において有意に関連するデータを抽出することに成功した.無論,得られた知見はあくまでデータから類推される認知機能のモデルであり,実際に人間がそのような情報に注目しているかは未検証だが,ドライバが用いていると推定されるパラメータ,用いていないと推定されるパラメータの双方とも,通常人間が見ている,あるいは,その情報は見ていない,とドライバ本人が思っているであろう情報と強い関連性は確認できた. また,上記の実験のためのデータも含め,のべ50人×2時間余りの運転行動データをシミュレータにて取得している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画にあった,運転行動からの認知,判断,操作を抽出する技術については,おおむね確立できた.特に,従来のシステム同定手法では困難であった,人間がどの情報に注目しているか,すなわち認知に関する知見を得る部分について,得られたデータのみからボトムアップにモデルを構築することが可能となり,この部分に関しては当初の計画に比べても順調に進展しているといえる. 一方で,運転行動データのデータベース化や,オープンデータベースの構築については,自研究室での運転行動データのデータベース化は一部完了したものの,他のオープンデータベースについての検証が十分進められておらず,また,収集データを公開するためのソフトウェア環境の構築にも手間取っており,公開のためのAPI設計やインフラ構築が完成せず,ハードウェアの購入にも進むことができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は下記である. ①取得したデータのフォーマットを,一般のオープンな運転行動データベースと親和性の高い形に整え,可用性を高めるとともに,ユーザーに分かりやすい,使いやすいデータベースとなるように検討する. ②インフラとしてサーバ環境を構築し,上記の運転行動データを,外部からアクセス可能になるように整え,まずはシンプルな形であったとしても公開することを優先的に実施する. ③インフラ環境が構築でき次第,データからタスクや運転環境の切り出しをサポートするツールと,切り出された環境からモデルを構築するツール,そしてモデル自体の統計情報を得るツール,と,段階的にツールを提供し,ユーザからの使い勝手を向上して運転行動解析のための貢献をする. ④得られたモデルの実アプリケーションとして,個人適合型の自動運転や,運転支援をシミュレーションベース,および実車での実現を含めて検討し,その有用性を検証する.
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Causes of Carryover |
今年度中に準備する予定であった,データベース公開用のサーバインフラ構築のための費用に充当する予定の分について,実際に今年度,サーバ用のハードウェアならびにソフトウェアを準備するに至らなかったため. 今年度内にそのソフトウェア環境や公開するためのサイト構築を行おうと準備していたが,デスクトップPCにおける簡易の公開用サイトテストの構築が間に合っておらず,実際に購入するハードウェアの要件も十分に吟味できていなかったため,購入を先送りし,来年度以降,簡易の公開用サイトがおよそ公開準備に至った段階にてインフラ発注を行うことにしたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度,データベース公開用のソフトウェアや,WEBページが公開可能になった段階で,必要なサーバ要件を選定し,ハードウェア,並びに必要なOSやソフトウェア関連を購入していく. また,実車での運転行動データ取得も進める.いくつかの運転行動データ収集のためのセンサ類は,本補助金で購入する予定である.このセンサ類にも,本年度の繰り越し分を少し充当する予定である.また,いくつかのセンサ類(高額なもの)は研究協力者からの借用を計画しているが,当初まだ使用可能ではなかった新しいセンサもあり,それらのセンサ類の取り付け冶具やインタフェースは購入する必要があるため,これにも充当する予定である.
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Research Products
(5 results)