2016 Fiscal Year Research-status Report
分子鎖配向と分子間相互作用を利用した高強度な非晶性高分子ガラスの設計
Project/Area Number |
16K21099
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
信川 省吾 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50609211)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ポリメタクリル酸メチル / 延伸フィルム / 引張弾性率 / 力学異方性 / 側鎖構造 / 赤外スペクトル-引張試験装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、分子配向と分子間相互作用を利用した高分子フィルムの高強度化である。H28年度は、分子配向と引張弾性率の関係を調べるため、分子間相互作用を含まない汎用高分子について実験を行った。具体的には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)の延伸フィルムを用いて、引張弾性率の異方性を調べた。その結果、いずれの高分子でも、延伸方向の弾性率(E1)が高くなり、垂直方向の弾性率(E2)は低下した。さらに、複屈折値から見積もった主鎖の配向度を見積もり、弾性率を配向度に対してプロットすると、ほぼ直線的な関係を示した。そこで、各試料について延伸方向と垂直方向の弾性率の比(E1/E2)を決定すると、PC < PS < PMMA < PEMAの順に大きくなった。この順番は高分子側鎖の大きさの順に対応していることから、延伸フィルムの弾性率の異方性は、側鎖の大きさが関係することが示唆された。ただし、今回用いた4種類の高分子では、主鎖の構造は同一ではないため、今後は主鎖骨格をそろえ、側鎖のみを変えて実験を行う必要がある。 次に、赤外スペクトル-引張試験装置の設計を行った。市販の引張試験機では、赤外分光装置に取り付けられないため、小型かつ恒温槽の中央に赤外光レーザーが通る穴のある引張装置を設計した。赤外スペクトル測定はまだであるが、複屈折-応力同時測定を行ったところ、正しく測定できることが判明した。また、赤外用偏光板も入手し、取り付けが可能となっている。H29年度以降で、応力を負荷した状態で赤外スペクトル測定を行い、延伸方向と垂直方向における分子形態の違いを調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次で説明するように、ほぼ当初の計画通りに研究は進んでいる。まず、延伸フィルムの弾性率の異方性を評価し、側鎖構造との関係を定性的に考察した。ただし、主鎖構造が異なるため、H29年度以降では、用いる高分子の種類を選択し、側鎖のみの構造を系統的に変化させた実験が必要である。また、H28年度に作成した赤外分光-引張試験装置は、異なる応力を負荷したフィルムの赤外スペクトルを測定することが可能である。H29年度は、本引張装置を用い、各高分子フィルムにおける引張応力と赤外吸収ピークのシフト量の関係を調べる。以上より、次年度以降の計画に支障はなく、研究は順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、ポリエチレングリコール(PEG)をグラフト鎖として導入したPMMA(PEG-PMMA)に、ジオール、トリオールや、金属塩を添加し、高分子鎖間に水素結合または静電相互作用を形成させる。このPEG-PMMAブレンドフィルムを延伸し、主鎖を配向させ、弾性率および引張強度の異方性を測定する。この時、添加剤の濃度だけでなく、アルコールの価数、金属イオンの価数の影響についても検討し、最も力学強度を高める条件を探索する。さらに、H28年度に完成させた引張試験装置を用いて、応力負荷時の赤外スペクトルを測定し、延伸フィルム中の引張強度と分子構造の関係を考察する。また、水素結合やイオン相互作用は高温ほど弱くなるため、時間があれば、引張強度の異方性に対する温度の影響も調査する予定である。
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Research Products
(12 results)