2017 Fiscal Year Research-status Report
意思を持つと感じられる人工物のインタラクションモデルの開発と評価
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16K21113
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大本 義正 京都大学, 情報学研究科, 助教 (90511775)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒューマンエージェントインタラクション / 内部状態推定 / マルチモーダルインターフェース / 相互適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究課題「コンテキストを共有する過程における随伴的発展機構の中心部分の開発」においては、昨年度に取り入れた「アイスブレイク」の手法を、人間の認知能力の観点から発展させた手法の有効性を検討した。具体的には、コミュニケーションがうまく行われない事例の一つである「自閉症」の療育手法から手がかりを得て、基本的なコミュニケーションを人間とエージェントの間で成立させる手法を実験的に検討した。その結果、作業を通じたアイスブレイクよりも強固な関係を、人間側の性質にほとんど依存せずに生じさせることができることを示した。加えて、このような強制的なインタラクションの典型的な場面を、エージェントが自律的に実行するための枠組みを作成した。 当該年度の研究課題「インタラクティブな視座の分岐を促す随伴的発展機構の中心部分の開発」においては、複数のエージェントとのインタラクションにおいて、随伴性・目的指向性の提示を利用した、エージェントに対して意図を感じる関係の構築手法を拡張し、より持続性の高い、意図を推測し合う関係を構築する手法を検討した。具体的には、複数のエージェントと人間が、お互いに意見を出し合いながら意思決定を行うタスクにおいて、エージェントとの積極的なインタラクションを促し、より協調的な活動を行う手法を実験的に検討した。結果として、エージェントに対する積極的なインタラクションを促しながら、エージェントのいうことを聞くだけにならないという、創造的協調に必要な人間の心理状態を、暗黙的に作り出すことができた。 全体として、エージェントの行動と人間とエージェントの間の関係を随伴的に発展させていくための知見を深め、実際のエージェントへの実装を進めることで、インタラクションモデルを精緻化し、エージェントに対して意図を感じる「志向姿勢」を誘発・維持する手法を発展させることができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究課題「コンテキストを共有する過程における随伴的発展機構の中心部分の開発」においては、従来、しばしば問題になっていた、インタラクション相手である人間の性質によって効果が異なるという点に対して、人間の性質にほとんど影響を受けることなく、人間とエージェントの間で一定の意思疎通を考慮したインタラクションを行うことができる心理的な態度を誘発する手法が開発された。 当該年度の研究課題「インタラクティブな視座の分岐を促す随伴的発展機構の中心部分の開発」においては、1対1の関係では難しかった、エージェントの持つ視座の粒度と範囲の伝達を、観察による推測と行動による検証を通して、人間に意識させることなく伝達できる手法が開発された。 また、これらの分析の基盤となる人間の内部状態推定に関する手法について、国際会議においてベストペーパーを受賞することができた。 一方、統一的な随伴的発展機構の開発については、概要の設計はほぼ完了したものの、具体的な実装にはやや遅れが生じている。 総じて、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初計画に沿って発展させていくが、本年度は特に、「コンテキストを共有するインタラクション」と「視座の分岐を持つインタラクション」のそれぞれで開発された、視座協創と随伴的発展機構を統合し、モジュール化して再利用可能な形でエージェントへ実装することを中心として行う。 目標としては、随伴的発展機構の中心部分である、随伴的行動を用いた意図を感じさせるインタラクションプロセスに、視座協創において見られる意思決定に対する視野の拡大を促す手法を組み込み、マルチモーダルなインタラクションにおいて表出される、目に見える情報に対する随伴性のみならず、インタラクションを通じて発散・収束する、エージェントに対する行動と認識のモデルを、人間に自発的かつ暗黙的に作らせることを目指す。 具体的には、対面条件におけるインタラクションで有効であった、強制的なインタラクションと随伴的な行動による目的指向性の提示、および、複数のエージェントとのインタラクションで有効であった、観察と行動の混在する場面における随伴的な視座の分岐を誘導する手法とを、複数のタスクが並行して実行される状況においてエージェントと人間が協調するタスクに適用し、随伴的発展機構のフレームワークを作成する。
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