2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K21116
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小長谷 周平 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定研究員 (60770295)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / 膵島 / 細胞外電位 / インスリン / Microelectrode array |
Outline of Annual Research Achievements |
膵島の重要な生理機能であるグルコース濃度に依存したインスリンの分泌の新たな評価法として、Microelectrode array (MEA)を用いた細胞外電位計測法の確立を目的とした。本年度は、主に、1. マウス及びラットから単離した膵島を用いた安定的な計測手法の確立、2. ヒトiPS細胞由来の膵島細胞の安定確保に関する手法の確立を目指した。 1.単離膵島を用いた計測手法の確立。 C57BL6/c マウスおよび Wisterラットの膵臓より膵島を単離した。Laminin-5をコーティングした電極表面へ膵島を接着させ、細胞外電位測定を行った。電極に接着された膵島を3 mM、9 mMまたは15 mMの異なるグルコース濃度で刺激をした時の細胞外電位を測定した結果、膵島の細胞内Ca2+の変動に伴う間欠的なスパイク群の発生を測定することができた。 2.ヒトiPS細胞由来の膵島細胞の安定確保に関する手法の確立 ヒト多能性細胞由来の膵島細胞を用いた電位計測を行う時、iPS細胞株間やロット間の分化誘導効率やインスリン分泌能のばらつきが、大きな問題となる。均一な性質を持つ分化細胞を得るための培養技術の確立は不可欠である。本年度は、ヒトiPS細胞から膵内分泌細胞への分化誘導を行う過程で、膵前駆細胞を効率的に増幅させる培養法を新たに見出した。継代培養を繰り返すことにより、95%以上の純度のSOX9及びPDX1陽性の前駆細胞を得た。増幅した膵前駆細胞はインスリン陽性の膵内分泌細胞へ分化した。次年度は、主にヒトiPS細胞から分化誘導した膵島細胞を用いた細胞外電位測定を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、多能性幹細胞由来の膵島の機能評価の比較対象となる単離膵島を用いた細胞外電位測定系を確立することができた。電極への膵島の接着性が悪く、電位の測定ができない問題があったが、Laminin-5をコーティングした表面へ膵島を接着させることで、細胞外電位の測定を可能にした。また、膵島に特徴的なグルコース濃度に応じた細胞外電位の変動も計測することができた。今後、波形解析等を行い、膵島機能の指標となるような分析法の確立を目指す。ヒトiPS細胞から誘導した膵内分泌細胞の細胞外電位計測も同様に試み、一部計測も可能であったが、ヒトiPS細胞の株間や分化誘導した細胞のロット間で測定結果に大きな差が見られた。分化誘導した細胞は単離膵島と異なり、分化誘導効率や細胞の成熟度の差、他の電位活性のある細胞の混入が影響すると推測される。分化誘導実験の過程で、膵前駆細胞を効率的に増幅させる培養法を新たに見出したので、細胞外電位測定が可能な膵島細胞の安定供給のための実験を行った。95%以上の純度のSOX9及びPDX1陽性の前駆細胞を得ることができ、約1万倍に増幅することができた。また、膵内分泌細胞への成熟が可能であり、インスリン分泌能を保持していた。高純度の多能性幹細胞由来の膵前駆細胞を大量に得る手法は他に例がなく、細胞外電位測定などの評価実験に対しての細胞の供給源に限らず、発生生物学や移植医療に大きく貢献すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット及びマウスより単離した膵島の細胞外電位計測が可能になった。今後は当初の予定通り、ヒトiPS細胞由来の膵島の細胞外電位計測を行う。イオンチャンネル阻害剤存在下での比較実験等を行い、細胞外電位の変化とインスリン分泌の相関についてより詳細な検証を進めていく。また、計測した電位変化の波形解析を行う必要が生じたため、高速フーリエ変換などの手法を用いて、電位変動の大きさや周波数特性などとインスリン分泌量との相関を調べていく。
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Causes of Carryover |
ヒト多能性幹細胞から膵島細胞への分化誘導法について改良が必要になったため、測定に必要な細胞を調製するための分化誘導関連試薬の購入が当初の予定より少なかった。また、細胞外電位計測について、測定系が確立するまでに時間を要し、データ取得に必要な電極等の消耗品の使用が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞の調製法や細胞外電位計測法については、すでに確立済みである。次年度はデータ取得を進めるのため、細胞の調製に必要な試薬の購入費用及び電極等の測定に関する消耗品を中心にこれらの繰越金を使用する。また、研究成果をまとめ、国内外の学会で発表するための旅費等に充てる。
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Research Products
(3 results)