2016 Fiscal Year Research-status Report
地上部-地下部生態系間の連動性に着目した樹木根圏炭素動態の解明
Project/Area Number |
16K21131
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
安宅 未央子 国立研究開発法人森林総合研究所, 関西支所, 学振特別研究員 (00757924)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 炭素動態 / フラックス / 根圏呼吸 / 根浸出物 / 根圏プライミング効果 / 自動チャンバー / 連続観測 / 細根 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成によって樹木に取り込まれた炭素は、枝や幹を通り、根圏(根・菌根)へと輸送される。根圏に輸送された炭素は、根や菌根菌の生長・呼吸として消費されるのに加え、根圏滲出物として根圏土壌に分泌される。本課題では、光合成由来の炭素を介した根圏炭素動態を観測し、森林土壌圏炭素動態への寄与を定量的に評価するため、根圏呼吸速度と滲出物量のリアルタイム測定装置の開発を行った。時々刻々と変化する環境に対する根圏呼吸速度の応答性を測定できる装置は、シリンジとビーズを用いて根圏浸出物量を定量する方法に、シリンジ内のCO2濃度を連続観測できるユニットを用いて構築した。この装置で測定されたデータは、マニュアルで測定された呼吸速度との比較検討を行った。 暖温帯林のコナラを対象に観測をおこなった結果、根圏呼吸速度は温度に応じた日周変化をしていることがわかった。一方で、観測装置に関しては、チャンバー内の根量が少ないこと、根の挿入口からガスが漏れることが原因で、安定した連続データを取得することができないといった問題点が発生した。これらは、次年度の課題として検討する。また、マニュアルで測定された根呼吸速度と浸出物量は正の相関を示し、さらには両者のフラックスは、菌根菌感染率や根のN含有量とも正の相関を示すことがわかった。 これらの成果により、時々刻々と変化する環境要因に対する根の炭素動態に加え、根の炭素動態と地上部光合成との連動性を直接観測することが明らかにすることができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり根圏呼吸速度測定装置の開発を進めたが、安定したデータを取得することができなかった。一方、改善点を抽出できたので引き続き開発を行っている。また、マニュアルでの根圏呼吸・浸出物の測定を行うことで、その関係性を評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)前年度に引き続き根圏呼吸速度測定装置の開発を進め、環境応答性を定量する。 (2)根圏呼吸と光合成データとを組み合わせることで、両者の関係性を評価する。
|
Causes of Carryover |
当該年度では、根圏呼吸速度測定装置の検討を集中的に行った結果、計画当初に予定していた複数の測定装置に必要なガスアナライザーやロガーの購入を見送ったため、次年度に繰越を計上した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、根圏呼吸速度測定装置を複数構築し、根圏呼吸データのサンプリングを効率よく行う予定である。
|
Research Products
(5 results)