2017 Fiscal Year Research-status Report
地上部-地下部生態系間の連動性に着目した樹木根圏炭素動態の解明
Project/Area Number |
16K21131
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
安宅 未央子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 学振特別研究員 (00757924)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 根圏呼吸 / 樹木細根 / 光合成 / 日射量 / 日周変化 / 樹液流 / 実生 / タイムラグ |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成によって樹木に取り込まれた炭素は、枝や幹を通り、根圏(根・菌根)へと輸送される。根圏に輸送された炭素は、根や菌根菌の生長・呼吸として消費されるのに加え、根圏滲出物として根圏土壌に分泌される。そこで本研究では、光合成由来の炭素を介した根圏炭素動態を観測するため、リアルタイム測定装置を用いた根圏呼吸速度の高頻度測定を行い、時々刻々と変化する環境要因に対する根圏呼吸速度の応答性を明らかにした。 シリンジサイズのチャンバーを用いたリアルタイム測定装置は30分毎の根圏呼吸速度のモニタリングを可能にした。チャンバーにビーズと栄養塩液を満たすことによって、数週間程度、根の生理活性が維持することを確認した。この測定装置は、野外での使用を前提とし片手で運搬できるように小型化した。また、樹種や場所によって異なる根の形態に適用できるように、チャンバーのサイズを変更することで、その場に応じた根圏呼吸速度の測定が可能である。 細根呼吸速度は温度や日射量に応じた日周変化を示し、そのピークは12~14時あたりに位置した。根圏呼吸速度と温度は指数関数の関系を示す一方、同温度帯でのばらつきが大きかった。そのばらつきは、日射量によって影響を受けており、日射量が大きいほど根圏呼吸速度も大きい傾向にあった。細根呼吸速度の時間変動は温度だけでなく刻々と変化する日射量に対して応答していた。この結果は、地上部の光合成活動による地下部への早いC供給によって影響を受けていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり根圏呼吸速度測定装置の開発を進め、データを安定して取得することができるようになった。それにより、根圏呼吸の時間変動が環境要因や地上部の活動に対してどのように応答しているのかを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
根圏呼吸速度の連続測定データを蓄積するのに加え、陰被処理を行うことで、根圏呼吸速度が環境の変化(日周変化・季節変化)に対してどのように応答するのかを定量的に評価する。また、光合成データを組み合わせることで、地上部-地下部間のつながりを評価する。
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Causes of Carryover |
1年目での根圏呼吸速度観測システムの開発が遅れたため、全体の計画に遅れが生じている。今年度に予定していたシステム増設が多少遅れているため、次年度に繰り越すことにした。次年度では増設したシステムを用いて、異なる樹種間の根圏呼吸速度の観測を行う予定である。
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Research Products
(4 results)