2018 Fiscal Year Research-status Report
20世紀の南アジア・イスラーム思想の再構築に向けた基礎的研究
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16K21136
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
須永 恵美子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 特別研究員(RPD) (00722365)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 南アジア / イスラーム / ウルドゥー語 / パキスタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近現代イスラーム世界、とりわけ南アジアにおけるイスラーム復興の理解のため、同地のイスラーム思想家に関する包括的な研究基盤をつくり上げることにある。特に20世紀を代表する宗教家サイイド・アブルアアラー・マウドゥーディーに着目し、彼を核とした南アジアのイスラーム復興の諸勢力の相関性を明らかにする。マウドゥーディーの思想は、広くイスラーム世界各地でその影響が確認されており、現代のイスラーム復興の礎となってきた。本研究では、彼の多数の著作や講演録、雑誌記事、パンフレット等を収集・分類し、彼の活動と思想を南アジアの宗教政治運動の中に位置づけることによって、南アジア・イスラーム研究の基盤構築を目指すおのである。 3年目の本年は、マウドゥーディーの組織した政治団体ジャマーアテ・イスラーミーと、彼の活躍した20世紀前半のムスリム知識人に着目した。前者としては、エジプトのムスリム同胞団の影響からみるジャマーアテ・イスラーミーの研究の可能性に着目し、従来思想的なつながりが指摘されてきた両団体が、団体としての交流にさほど重きをおいてこなかったことを指摘した。 後者としては、マウドゥーディーを含む19世紀後半から20世紀前半に活躍したムスリム知識人が、現在のパキスタンにおいてどのように語られていたのかを、学校教科書のテキスト分析から明らかにした。その結果、ジャマーアテ・イスラーミーやデーオバンド学院といったイスラーム系の政治組織・教育組織はほとんど触れられることがなく、そのかわりにムスリム連盟やジンナーといった政治家らについての評価が高かったことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内での研究会・学会に積極的に出席し、政治学方面の分析手法を取り入れるべく研究を進めている。一方で、予定していた和文ブックレットの出版には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究の総まとめとして、南アジア・イスラーム復興における諸宗教勢力の関係図を明らかにする。マウドゥーディーと彼の率いたイスラーム党を中心に、ウラマー党やクルアーンの道党、布教団体タブリーギー・ジャマーアトといった国内の宗教勢力との関係を解析し、さらに中東のイスラーム同胞団、南アジアのシヴセーナーといったヒンドゥー教団体など、各地の宗教勢力との連携・対立関係を描き出す。
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Causes of Carryover |
物品費の購入にあたり、見積もりの結果予定よりも安価に済んだため繰越金が生じた。次年度の物品費に加えて使用する。
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Research Products
(5 results)