2016 Fiscal Year Research-status Report
フシコクシン誘導体の細胞内標的同定:低自由度リンカーによるアフィニティ精製
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16K21138
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
樋口 雄介 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (10723439)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フシコクシン / ケミカルバイオロジー / アフィニティー精製 / タンパク質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まずプローブ分子の合成を行った。まず、ISIR-005の3’位にリンカーを連結するための酢酸ユニットを位置選択的に導入した。次に、リンカー部位の合成を行い、これを前述のISIR-005誘導体と縮合して、設計した自由度の低いリンカーを有するhexadiyneリンカープローブ(HD-005)、CH2(CF2)8CH2リンカープローブ(PF-005)を合成した。また、比較用にPEGリンカープローブ(PEG-005)、ポリプロリンロッドリンカープローブ(PP-005)も合成した。4つのプローブ分子の14-3-3/リン酸化タンパク質間のタンパク質間相互作用(PPI)安定化効果の評価するため、精製14-3-3ζタンパク質と蛍光ラベル化した14-3-3結合性モデルリン酸化ペプチドを用いて、蛍光偏光法による結合試験を行った。その結果、HD-005, PP-005, PEG-005の3つがISIR-005に匹敵する明確な安定化効果を示した。次に、アフィニティ精製によって標的タンパク質複合体をプルダウン可能かどうかを検証するため、これら3つの分子を磁気ビーズに担持した。このビーズとリン酸化ペプチド、精製タンパク質を用いてビーズ上にて3者会合体を形成させ、これを3回洗浄後にビーズ上に残ったタンパク質を溶出したところ、3つのビーズで同程度の量の14-3-3タンパク質が検出された。リン酸化ペプチドが存在しない条件で、同様の実験を行った場合、14-3-3タンパク質は洗浄操作で洗い流されてしまうことから、3つのプローブが全て3者会合体形成依存的に標的をプルダウンすることが可能であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた、1)プローブの合成、2)14-3-3とモデルリン酸化ペプチドを用いたプローブ分子の会合特性評価、3)SPRシステムを用いた条件検討を行い、さらに平成29年度に予定していた4)細胞破砕液を用いたアフィニティー精製実験も行った。 まず合成については申請書記載の5種プローブ分子のうちbutyneリンカー以外のHD-,PF-005,PEG-005,PP-005を合成出来た。butyneリンカーは繰り返しユニットの数の増加に応じて、溶解性が低下し、反応および精製が困難になったため合成を断念した。合成出来た4分子を用いて、蛍光偏光法によるPPI安定化効果の評価を行ったところHD, PP, PEG-005の3つがISIR-005に匹敵する明確な安定化効果を示した。次に速度論的な解析を試みるため、Biacoreシステムでの評価を行ったが、この際にアビジン‐14-3-3間に相互作用があることが分かり、現状の末端をビオチン化したプローブでは、それ以上の速度論的、熱力学的な解析を行うことが困難になった。そこで、計画を変更し、SPR及びITCでの評価は中断し、実際に磁気ビーズにHD, PP, PEG-005を担持し、これとリン酸化ペプチド、精製14-3-3を用いてプルダウン効率を調べた。その結果、HD, PP, PEG-005はどれもほぼ同程度に14-3-3・リン酸化ペプチド複合体をプルダウン出来ることが明らかになった。これらのビーズを用いてHL-60細胞破砕液からプルダウン実験を行い、サンプルをSDS-PAGEで展開したところ、複数のタンパク質バンドが確認できた。この中で、14-3-3の分子量に相当する30kDa付近の最も濃いバンドをゲルから切り出し、MS/MSイオンサーチからタンパク質の同定をおこなったが14-3-3の断片は検出されなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、リンカーの違いによる、標的へのアフィニティの変化を、熱力学的、速度論的に評価する予定であったが、アビジン‐14-3-3間に相互作用があることが判明し、現状のプローブではこれを評価することが困難となった。この問題を解決するには、プローブの合成からやり直す必要が生じる。しかしながら、ビーズを用いた評価からは、3種のリンカーは全て標的をプルダウンするのに十分なPPI安定化作用を有していることが示唆されており、本研究の最終的な目標は、14-3-3/リン酸化タンパク質複合体をプルダウンすることであるため、リンカーの再合成、評価のやり直しをせずにプルダウン実験を進める。最初のプルダウン実験の予備的な結果においては、コントロールに比べ有意に濃い標的候補タンパク質のバンドが複数検出されている。しかし、30kDa付近の最も濃いバンドのMS/MSイオンサーチを行った結果、14-3-3タンパク質は検出されなかった。 そこで、まずはプルダウン実験の再現性の確認を行い、また、サンプル中に14-3-3が存在するかどうかをウェスタンブロットによって確認する。再現性、及び14-3-3の存在が確認できれば、サンプル中の標的リン酸化タンパク質の同定を行う。再現性が得られない場合には、各種ホスファターゼ阻害剤の添加や、手順の見直し、分画化など細胞破砕液の調整法を工夫する。実験の再現性はあるが、14-3-3の存在が確認できない場合、ISIR-005の活性に14-3-3が関わっていない可能性を考え、14-3-3が活性に関わることがより明確なFC A系の化合物にプローブを切り替える必要がある。
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Causes of Carryover |
申請時はBiacoreシステムを用いたプローブの機能評価を行う予定であったが、これは14-3-3タンパク質とアビジン担持チップとの意図しない相互作用により測定が不可能であることが判明し、Biacoreシステムでの評価から、磁性ビーズを用いた評価に切り替えることとした。Biacoreシステムでの評価を打ち切ったことにより消耗品分の経費が出ず、また、磁性ビーズは多摩川精機より20万円分が無償提供されたことから、予算に35万円程度の余裕が出来た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Biacoreシステムでの評価の代替実験を磁性ビーズで行ったため、本来今年度使用予定であった無償提供分の磁性ビーズは既に使い切ってしまった。また、これらの評価には、別途タンパク質検出用抗体が必要である。繰越分は、追加の磁性ビーズ及び各種抗体の購入に用いる。
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Research Products
(3 results)