2016 Fiscal Year Research-status Report
非漢字圏学習者の漢字語彙学習の成功に影響する要因の解明:効果的な学習支援のために
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16K21145
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大和 祐子 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 准教授 (80707448)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 漢字習得 / 非漢字圏日本語学習者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,主に非漢字圏学習者に対する漢字習得の先行研究の検討,具体的な実験デザインの構築,及び実験刺激の作成等を行った。 まず,漢字実験を行うにあたり,被験者の選定に用いる語彙テストの開発を行った。次に,試行テストをフィリピンで実施してその有用性を検討した。結果,開発した語彙テストは概ね信頼性を保証できるものであること,また出題された品詞・語種により正答率に影響するものではないことが確認できた。漢字実験刺激は,漢字文字正誤判断課題と漢字語彙性判断課題の二種を作成し,パイロット調査後,本調査を実施した。調査に先立ち,被験者の日本語の語彙知識を測定するために,開発した語彙テストを行った。また,調査では,二種の実験の他,紙媒体で漢字学習ストラテジー調査も行った。なお,漢字学習ストラテジー測定には,Bourke (2006)のSTRATEGY INVENTORY FOR LEARNING KANJI (SILK)を使用した。本調査には,日本国内在住の非漢字圏学習者47名,漢字圏学習者17名が参加した。漢字圏学習者は当初の実験デザインでは調査対象としていなかったが,非漢字圏学習者の漢字処理を明らかにするためには漢字圏学習者との比較が不可欠だと考え,実験デザインを一部変更し,漢字圏学習者との比較も行った。現在,実験結果をまとめ,単漢字の漢字処理の非漢字圏学習者と漢字圏学習者の分析を進めている。 この実験の他に,非漢字圏学習者の漢字の読み書き能力を測るテストを作成し,日本語語彙知識と漢字の読み取り能力,漢字の書き取り能力の因果関係を明らかにした。調査対象者は,韓国在住の日本語学習者31名であった(日常的に漢字に触れる機会がほとんどないことから非漢字圏日本語学習者に準ずると考えた)。その結果,語彙知識は漢字の読み取りに影響し,それがさらに漢字の書き取りを促進するという因果関係が見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた漢字処理実験はほぼ終了しており,2017年度に予定していた分析についても一部を既に終えている。それに加え,当初予定していなかった比較対象としての漢字圏学習者への実験ができたこと,韓国人学習者を対象とした漢字の読み書き能力と語彙知識の因果関係の検討へと研究を進めることができたことから,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,漢字処理実験のデータ分析を進める。既に漢字文字正誤判断課題の正答率からの検討は行っているが,今後は反応速度からの検討が必要になる。漢字語彙性判断課題の分析も今後行っていく。両実験結果の分析には,多くの変数が存在する。より詳細な分析を行うために,近年心理言語学で用いられている最新の方法での分析を行いたい。また,研究結果は今後,国内外の学会で報告し,学術論文にまとめたい。
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Causes of Carryover |
本年度,実験に使用するためのコンピューターを2台購入したが,実験に必要最小限のスペックのものを入手したことにより,当初予定より安価に購入することができ,経費が節約できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の反応時間測定の実験結果分析に最新の分析方法を導入するため,情報収集の一貫として,その分析方法についてまとめられた書籍の購入に充てる。
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Research Products
(4 results)