2016 Fiscal Year Research-status Report
脳磁図を用いた色彩調和判断における時間的機序の解明
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16K21148
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
池田 尊司 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (80552687)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | MEG |
Outline of Annual Research Achievements |
筆者らが以前行った実験より、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって同定された色彩調和の責任領域は、調和する配色とそれ以外の配色との比較では内側前頭眼窩皮質(medial orbitofrontal cortex: mOFC)および前部帯状回(anterior cingulate cortex: ACC)であり、不調和な配色とその他の配色との比較では扁桃体(Amygdala)であった。この実験からは色の調和・不調和を単独で表現している脳領域を探し当てることはできず、調和・不調和は別個の領域で表現されていることがわかった。fMRIで得られるデータは領域の特定に威力を発揮するが、時間分解能の制約から、視覚刺激がまず最初に入力される視覚野と、これらの責任領域の間に、どのようなダイナミクスが生じているのかを検出することが難しい。本研究の主眼は、およそ1秒ほどの間に行われる色の調和・不調和の判断がなされるまでに、脳のどの領域がどのようなタイムコースで賦活しているかを、時間分解能に優れる脳磁図(MEG)で検証することである。 平成28年度には、色知覚と視覚的記憶に関する基礎的知見を収集するため、健常成人を対象とした脳のネットワーク構造を調べる実験を行い、のべ40名分のデータを取得した。14名分の解析結果からは、視覚刺激の呈示から150ms程度で高次視覚野の活動がピークを迎え、その後から頭頂領域でのβ帯域における脱同期が起こることがわかった。前頭前野ではまだ明確な差が得られておらず、脳のネットワーク構造に着目した解析データの蓄積を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年4月に大阪大学から金沢大学への所属変更と、実験を予定していた装置であるMEGおよび視覚刺激呈示装置の所管変更があった。まずは本装置を用いた際の色知覚と視覚的記憶に関する基礎的知見を収集するため、健常成人を対象とした脳のネットワーク構造を調べる実験を行い、のべ40名分のデータを取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験の結果、他社の装置を用いた場合にはノイズで覆い隠されてしまう高い周波数の脳律動データも得られていることがわかり、解析上の可能性が広がった。平成29年度には解析を強化するための装置の購入と美的評価実験を行い、研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
色彩輝度計を購入予定であったが、金沢大学所蔵の色彩輝度計を使用できることとなり、購入を見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にデータ解析のためのワークステーションを追加し、研究のさらなる推進に充てる予定である。
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