2016 Fiscal Year Research-status Report
欧州連合における移民政策と難民政策‐「人道主義」の矛盾
Project/Area Number |
16K21150
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
東村 紀子 大阪大学, 国際公共政策研究科, 招へい研究員 (80647553)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 日本政治学会における学会発表 / フランス内務省総監との共著作成 / (ヨーロッパにおける)現地調査結果 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年4月1日、世界政治研究会主催による「オランド政権下における安全保障政策としての移民政策及び難民政策-従来の移民政策との比較と社会党政権の妥協-」」と題した研究発表を行った(於:東京大学本郷キャンパス山上会館)。同発表では報告者による約100分にわたる発表とコメンテーターによる質疑と討論、フロアからの質疑応答に答える形で3時間にわたって開催された。同発表では、人道主義を第一のスローガンとして標榜しつつ移民政策及び難民政策を推進すると約束するとしたオランド大統領ならびにオランド社会党政権が、実際には難民政策及び移民政策が後手に回るのみであり、安全保障政策の観点からも抜本的な解決を先延ばしにしてきた現状を明らかにした。分析手法や研究結果について、当日お集まり下さった先生方から多くのご指摘やご意見を戴くなど情報交換の場としても有効活用でき、報告者の研究対象地域以外の考え方についても知見を得ることができた。上記発表を経て得られた分析視点をもとに、従来は当然視されてきた移民統合モデルは、もはや従来のモデルとしての有用性及び普遍性が損なわれつつあり、昨今の難民政策及び移民政策を進める上ではむしろ形骸化していると言える現状について指摘する論文を執筆した。その成果報告として2017年9月23日に日本政治学会において学会発表を行うことが決定している。 さらにMaxime Tandonnetフランス内務省総監とともに、同国の移民政策及び難民政策を主題とした共著を執筆する準備を進めており、同政策領域における政治学的観点からの分析を行った著書を執筆するべく鋭意活動を進めることができた。完成はもう少し先の見通しとなっているが、フランスの同政策領域について政治学的論点から分析された文献は極めて希少なため、他のフランス研究者または移民政策研究者にとっても有用な視点を提供しうる文献作成を目指した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的な評価としては、研究推進にあたってベストを尽くす中でおおむね順調に進捗していると言えよう。とりわけ研究対象地域とするフランス及びフランス周辺諸国において得られた多くの知己から、折々の政治的事象についての希少な情報を得ることができたことや、インタビュー調査などでは常に豊富な人脈による多数の好機を得られたのは本報告者の研究遂行にあたっては非常に多くの場面で助けられたと考えている。また2017年3月に海外出張を行い、フランスのみならずルクセンブルク、モナコ、イタリアの移民政策ならびに難民政策についても研究を進めることができ、政府関係者や研究者とのインタビュー結果から、文献解釈だけにとどまらない生きた情報や人間関係から得られた成果は限りなく大きいものであったと言える。 ただ一方では、そうした海外での聞き取り取材で得られた情報や、分析して明らかにできた結果をまだ学術文献としてまとめ切れておらず、理論研究にも貢献を果たせるようなものとして明確に十二分に打ち出した論文を書き上げられていないことから「十分満足のいく結果を平成28年度内に出せたか?」の問いに関してはさらなる努力を継続して行う必要性があることを痛感している。本報告者が研究を遂行したことにより、その分析結果をアウトプットとして学術界ならびに社会に対して還元していくためには、よりいっそう迅速かつ正確に研究結果をまとめる努力を行い、学術雑誌や著書としてまとめ上げる必要があると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
前項でも記したとおり、海外における聞き取り取材で得られた情報や、分析結果をまだ学術文献としてまとめ切れておらず、成果を十二分に打ち出したと肯定できる論文を書き上げられていないことから、今年度は複数の文献を完成させて各学会誌やジャーナル等に積極的に投稿していきたいと考えている。 また、平成28年度内に行った研究内容をまとめるとともに、2017年度フランス大統領選挙の選挙結果分析を行い、同国における既存の移民政策及び難民政策が大統領選挙結果への影響を及ぼしていることについても明らかにしていきたい。そのために平成29年度は数値化された最新のデータを活用し(世論調査結果など)、定量分析も加えた分析視点を構築できるように努めたい。 さらに2017年9月23日に開催される日本政治学会において研究発表を行う際、日本国内の先生方より様々なご指摘やご指導を戴ける機会となるため、そうした学術界におけるコミュニケーションの場で戴いたご指導内容を、十分に今後の研究に生かせるように努力し、アウトプットとしての論文や著書作成へとつなげていきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
平成28年度における研究遂行のために新たに購入する必要のある物品数が予想よりも少なく、また報告者本人のスケジュール上の理由から当初予想していた国内出張費及び外国出張費が大幅に抑えられたため、平成28年度以内に全額を使用しない結果となった。 また平成29年度には28年度よりも多くの学術論文投稿を行うことを予定しており、そのために必要な物品費やネイティブチェックのための人件費、海外渡航費ならびに国内出張費を平成29年度に使用することが平成28年度の段階で見通されていたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前項に既に記した通り、平成29年度には28年度よりも多くの学術論文投稿を行うことを予定しており、そのために必要な物品費(USB、印刷用紙等)やネイティブチェックのための人件費、海外渡航費ならびに国内出張費、文献購読のために使用させて戴きたい。 また平成29年9月23日に日本政治学会での発表を行う際に国内出張費として使用させて戴きたいと考えている。また報告者本人の研究領域とする分野は、他の研究者も多く研究対象としていることから日々、必読文献が増えていると言ってよい。そうした今日的なイシューについての学術文献や新聞、雑誌等を国内のみならず海外から取り寄せる必要もあることから、必要経費として支出する予定である。
|
Research Products
(2 results)