2017 Fiscal Year Research-status Report
欧州連合における移民政策と難民政策‐「人道主義」の矛盾
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16K21150
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
東村 紀子 大阪大学, 国際公共政策研究科, 招へい研究員 (80647553)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 論文採択(日本比較政治学会) / 学会報告(2018年度)採択 / 日本政治学会における発表及び報告 / 政策決定者へのアクセス / 研究大会、研究会における知見交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度はまず、9月23日に日本政治学会の分科会(B‐7)において「オランド大統領政権下における移民政策と難民政策、難民の処遇について」の報告を行った。本報告はフランスだけでなく欧州全体としての難民政策及び移民政策に深く関わることから、実証分析を行うにあたっては非常に多くの文書資料と音声・画像情報を渉猟した。 また現在までの研究成果を文書として所属学会の論文集に発表したいと思い、日本比較政治学会の年報論文に応募したところ「フランスの移民政策及び難民政策に見る【統合】と【分断】-サルコジ主導による政策期からオランド政権までを中心に- 」が採択され、2018年6月下旬に発行されることとなった。また上記論文を作成する中で、フランスの移民政策ならびに難民政策の観点から「ポピュリズム」「ポピュリスト」の性質を再考する発表を行いたいと思い、日本比較政治学会が応募する2018年大会の発表論稿を送ったところ採択され、結果「難民危機を迎えたフランスにおけるポピュリスト-移民と難民をめぐる政策論争からの考察-」と題する発表を2018年6月に行うことになったため、2018年5月現在、鋭意論稿の加筆修正を行っている。ポピュリストと呼ばれる政党の言説は安全保障上の脅威を感じる人々の気持ちを大いに惹きつけ、左右を超えて危機管理に関する共通認識として仏国内において幅広く共有された。平成29年度にはこうしたポピュリストが支持されるようになった政治的ストリームを特に強く解明したいとの意識を持つようになり、以前から続けてきた研究により有機的な観点を含めて研究を進めることができたと考えている。 また、日本比較政治学会と日本政治学会、移民政策学会へ出席し、多くの研究者、実務者の方々と出会って知見を深めることができたことも大きな収穫であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究そのものとしては概ね順調に進んでおり、自身で決めている「1年に1度は必ず全国的な学会での学会報告」を行い、専門家である先生方よりコメントやご指導を戴くなど、研究成果そのものへのフィードバックを戴く中で、進捗状況として決して悪くない経過をたどっていると言える。 また何より、今まで幾度かトライしてみるも叶わなかった学術誌への投稿論文が、平成29年度には採択されたことが最も自身の研究が順調な進捗状況であることを強く感じる出来事であった。この論文は日本比較政治学会の年報に掲載されることが決定されており、精魂込めてコンパクトに研究成果をまとめ上げることができたと自負している。 平成29年の夏は親の一方が癌に罹患したことで、今後も研究そのものを続けていくことができるかどうか非常に不安に思い、また実際に研究調査に出かけようとしていた矢先に親の手術や入院が決まったため調査旅行をキャンセルせざるを得なかったので、研究の遅れを大変に心配していた。しかし実際には研究が認められる機会が多く、逆境に負けまいと奮起したために当初心配していたほどの遅れを見せることはなく現在に至っている。 今後も研究ペースを落とすことなく努力していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度、家族内の事情により実施できなかったこととして(平成30年度まで予算執行を引き延ばして下さったことに感謝しつつ)、欧州議会のあるストラスブールでの聞き取り調査及び政治家や研究者へのインタビューを行うための海外出張が挙げられる。本報告者は以前より欧州議会内における知己を非常に多く有していることから、彼らから聞き取る生きた情報を手に入れることが容易であるため、よりいっそう研究に有益な情報を反映させていきたいと考えている。 また平成30年度は、11月に報告者と最も親しいMaxime Tandonnetフランス内務省総監が来日するため、その機会を捉えてフランスの難民政策及び移民政策について情報の裏付けをとり、論文作成をはじめ鋭意研究を進めていきたいと考えている。現在、非常勤講師として勤務している京都外国語大学においてもTandonnet氏を招聘して講演会を行い、本報告者が逐次通訳及び同時通訳を行うことが決定しているため、そうした機会にも新しい研究の切り口を見出すことができればと考えている。
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Causes of Carryover |
平成29年8月1日、母が癌に罹患しているとのことを主治医からの説明を受け、急遽入院と手術を受けることが決定した。このため家と病院との間を1日に複数回往復し、母の生活上必要な行為の介助や介護を行い、退院した後も10月末までは母にほぼつきっきりであった。当然、当初は8月初旬に出発する予定であった海外出張の取り消しを余儀なくされ、また実質的に8月からの3カ月間は研究と母の看病、家事の全てを両立させることが困難を極めたため、所属大学の担当者に相談したところ、平成30年度末まで執行を引き延ばすことが可能であるとの旨を伺い、手続きを依頼した。 平成30年度は、平成29年度に論文が採択されたことや研究を思いのほか順調に進められてきているため、現在までの研究成果を反映させた論文を2本は出せるようにすることを目標としている。また2018年6月に学会報告を控えていることから、より精緻化された研究を鋭意進め、今後の研究活動も滞りなく進めていきたい。なお、海外出張先としては欧州議会(ストラスブール)と欧州(特に移民及び難民政策でフランスとの協同政策を実施しているイタリアなどを中心として)訪問を予定しており、聞き取り調査対象者である方々には既に快諾を戴いている。また国内での研究会にも積極的に出かけ、専門家との意見交換を活発に行っていきたい。
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Remarks |
特になし
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Research Products
(2 results)