2018 Fiscal Year Annual Research Report
Immigration and Refugee Policies in European Union-Paradoxes of Humanitarianism-
Project/Area Number |
16K21150
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
東村 紀子 大阪大学, 国際公共政策研究科, 招へい研究員 (80647553)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 年報掲載 / 紀要掲載 / 有用な仮説の導出 / 日本比較政治学会での発表 / 在欧研究者との交流及び協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず本報告者の研究の第一段階として、近年において欧州連合が難民や移民の受け入れ条件を厳格化せざるを得ない現実に直面していることに着目し、報告者自身の専門領域であるフランスの移民政策及び難民政策だけではなく、EU共通の移民政策及び難民政策の採択過程における議論を整理することを課題としていた。この課題については、複雑かつ膨大な資料をもとに実証的観点から分析・研究を進めることができ、ヨーロッパを分断しているこの政治イシューの論点を明快に説明した論文を日本比較政治学会の年報(2018年7月発行)において発表できたことは大きな成果であった。 上記の年報ならびに2010年3月末に発行された佐賀大学経済記念論集にも拙著が掲載されるなど研究上の進展を実感するとともに、これらの論文内において欧州連合の分断や「人の移動」をめぐる政策決定過程を明らかにする中で、今後の研究においても大変重要な複数の仮説を導きだすことができた。 2001年以降、移民政策や難民政策は欧州各国内において常に最も大きな政治的関心事項と目される一方で、以前にもまして各国の協力を必要とする政策領域であるにもかかわらず、よりいっそうEU域内の分裂を加速させることになった。Brexitはメディアにて頻繁に取り上げられているものの、拙著ではイギリスだけではなく多くの移民や難民を抱えるイタリアやフランスなど、いわゆる伝統的な移民大国においては、EUからの離脱が真剣に議論・検討されている現状を浮き彫りにできた。 また研究の第二段階として据えていた、移民や難民を多く受け入れる欧州において、移民政策や難民政策が各党及び各政治家の支持率や選挙結果を左右する大きな政策イシューである現状を踏まえ、移民や難民に対する排外主義的傾向が国家政策もしくは超国家的政策として是認されつつあるのかを政治的理論を使って理論的かつ実証的に説明することができた。
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