2018 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属イオン置換ハイドロキシアパタイトの水熱合成と浄化特性評価
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16K21157
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
後藤 知代 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60643682)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水酸アパタイト / 光触媒 / 結晶形態 / 水熱 / ソルボサーマル / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
水酸アパタイト(HAp)はリン酸カルシウムの一種であり、生体親和性、有機物やタンパク質の吸着特性、陽陰イオン交換特性を有する。これらの特性はHApの結晶形態や構造、露出する結晶面に依存すると考えられることから、結晶形態を制御することで更なる高機能化と選択性付与が期待できる。本研究では、浄化材料や触媒の担体としての応用を目的として、金属酸化物と水酸アパタイトを複合化した光触媒(TiO2修飾HAp)の水熱およびソルボサーマル法による合成と、触媒担体としての水酸アパタイトの吸着特性制御、および金属イオンを結晶構造へ導入したHApの水熱合成の合成条件の検討に取り組んでいる。 平成30年度では、HAp単体の吸着特性について詳細に調べるため、昨年度と同様のアルコールを利用したソルボサーマル法により種々の結晶サイズを有するHAp針状結晶を合成し、メチレンブルーと酸性フクシンの色素を用いた吸着試験を行い吸着特性の評価と結晶形態、サイズやゼータ電位の関係について、ひきつづき調査した。その結果、針状のHAp結晶サイズが小さくなるほど、ゼータ電位は負から正へと変化することが分かった。また塩基性および酸性色素の吸着量は、このゼータ電位の違いによって変化する傾向が観察され、結晶サイズを制御することで色素の吸着量を制御できることが示唆された。これらの知見は金属酸化物との複合体および金属イオン含有HApを用いた材料合成の設計指針となると期待される。 一方、HAp結晶形態・サイズ制御のためのソルボサーマル法の新たな合成手法の検討として、カルボン酸とアルコールを利用したプロセスにより繊維状HAp結晶の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度において、昨年度に引き続き水酸アパタイト(HAp)単体の吸着特性と結晶形態、サイズとの関係について詳細に明らかにできた。金属イオン含有HApの合成実験は途中段階であるものの、今回のHAp単体における成果は本研究の材料設計において基礎となるデータであり、今後の研究遂行に役立つと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、水酸アパタイト(HAp)構造中への金属イオンの導入をひきつづき試みるとともに、構造制御のための水熱法およびソルボサーマル法による合成条件の検討についても継続する。さらに、これまで水熱およびソルボサーマル法による合成を報告しているTiO2ナノ粒子を担持した複合体試料(TiO2修飾HAp)の特性と比較することで、材料・構造設計の違いによる特性の差について考察する。
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Causes of Carryover |
今年度は、前年度からの未使用額が生じていたとともに、前年度から購入している物品、器具類を使用して実験を効率的に進めることができたため、次年度使用額が生じた。さらに、本研究課題においてHAp単体の吸着特性を詳細に試験する等、実験計画の変更が生じたことから実験期間延長を行っている。 平成31年度は、変更した実験計画をもとに実験および分析のための消耗品・物品購入に使用するとともに、元素分析等の依頼分析と、これまでの成果を論文として報告するための英文校正費および掲載費に使用する予定である。
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