線虫を用いた記憶・学習を制御するノンコーディングRNAの解析

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K21158
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 坂口 愛沙 大阪大学, 理学研究科, 助教 (90608697)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 機能性RNA

Outline of Annual Research Achievements

non-coding RNA（ncRNA）は，タンパク質をコードしないRNAで，多様な生理機能に関与することがわかってきている．これまで，ncRNAは主に発生や分化などの「プログラム」における機能が解析されてきたが，最近になって記憶や学習など「変化」を伴う高次神経機能における役割も見い出されている．神経細胞は，経験を通して刺激に対する応答性を一時的に変化させ，環境に適した応答ができるようになる（これを広義の「学習」と呼ぶ）．このような変化は，複雑な遺伝子発現制御を伴うと考えられ，ncRNAもその一端を担っていると予想される．しかし，どのncRNAがどのように記憶・学習や神経の可塑性に関与し，何のシグナルによって制御されているのかについては不明な点が多い．本研究では，線虫C. elegansを主なモデルとして，記憶・学習に関与するncRNAとその制御因子の解析を行い，高次神経機能における複雑な遺伝子発現制御機構の解明を目指す．本年度は，これまでにncRNAの合成や輸送に関与すると報告されている遺伝子の変異体の中から，生育や運動そのものに異常を示すものを除き，環境刺激に対する応答性を調べるアッセイを行った．今後は，さらに詳細なアッセイを行い，環境刺激応答や学習・記憶に異常を示す変異体を用いてRNA sequencingなどを行い，記憶・学習を制御するnon-coding RNAの解析を進める．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

ncRNAの合成や輸送に関与すると報告されている遺伝子の変異体の中から，環境刺激に対する応答性を調べるアッセイを行っているが，これまでのところ異常を示すものが少ない．環境応答については，複数のアッセイが知られているため，今後いくつか試し，それでも候補遺伝子を絞るのが困難な場合は，別のアプローチを検討している．

Strategy for Future Research Activity

本研究では，線虫C. elegansを主なモデルとして，記憶・学習に関与するncRNAとその制御因子の解析を行う．これまでに，ncRNAの合成や輸送に関与すると報告されている遺伝子の変異体の中から，環境刺激に対する応答性を調べるアッセイを行った．引き続き，複数のアッセイを行い，記憶・学習に関与するncRNA制御因子の候補遺伝子を探索する．候補遺伝子を絞るのが困難な場合は，記憶・学習に障害をもつ既知の変異体と野生型でRNA sequencingを行ってncRNAの発現パターンを比較し，学習に関与するncRNAの候補を見つける．記憶・学習に関与するncRNA制御因子の遺伝子もしくはncRNAの候補については，マイクロアレイを用いてターゲット遺伝子を探索し，その発現や翻訳への影響を調べる．また，ncRNA自身の発現細胞や作用を調べ，記憶・学習における機能や作用機序を調べ，より包括的な理解を目指す．

Causes of Carryover

当初は，ncRNAの合成や輸送に関与すると報告されている遺伝子の変異体の中から，環境刺激に対する応答性等を調べて記憶・学習に関与するncRNA制御因子の候補を探索し，RNA sequencingを行う予定であったが，これまでのところアッセイで異常を示すものが少なく，予定していたRNA sequencingに進めていないため．

Expenditure Plan for Carryover Budget

環境応答については，複数のアッセイが知られているため，今後いくつか試し，記憶・学習に関与するncRNA制御因子の候補を探索し，RNA sequencingを行う予定である．それでも候補遺伝子を絞るのが困難な場合は，記憶・学習に障害をもつ既知の変異体と野生型でRNA sequencingを行ってncRNAの発現パターンを比較し，学習に関与するncRNAの候補を見つける．