2020 Fiscal Year Research-status Report
線虫を用いた記憶・学習を制御するノンコーディングRNAの解析
Project/Area Number |
16K21158
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂口 愛沙 大阪大学, 理学研究科, 助教 (90608697)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 機能性RNA / 線虫 / 神経機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
ノンコーディングRNA(ncRNA)はタンパク質をコードしないRNAであり,さまざまな生体組織で多様な生理機能に関与することが明らかになりつつある.高等動物の記憶・学習などの神経活動は複雑な遺伝子発現制御を伴うと考えられ,ncRNAもその一端を担うという証拠が少しずつ報告されつつある.しかし,どのncRNA がどのように記憶・学習や神経の可塑性に関与しているのか,その制御機構については不明な点が多い.本研究では,シンプルな神経機能のモデルとして線虫C. elegansを用いて,記憶・学習に関与するncRNAとその制御因子の解析を行い,高次神経機能における複雑な遺伝子発現制御機構の解明を目指す.これまでに,記憶・学習に関与するncRNAを探索するため,環境刺激応答に異常を示す変異体からtotal RNAを抽出してsmall RNAシーケンスを行い,野生型と比較した.その結果,野生型に比べて変異体で発現が上昇もしくは下降しているncRNAを複数確認できた.また,これらの候補ncRNAによって制御されるターゲット遺伝子もしくは同じ経路で機能する遺伝子の候補を探索するため, 上述と同じ変異体を用いてtotal RNAシーケンスのQuantification解析を行った.その結果,野生型に比べて変異体で発現が上昇もしくは下降している遺伝子を複数確認できた.今後は,候補となった遺伝子とncRNAの発現について検証するとともにこれらの相関を調べる.さらに,これらの遺伝子やncRNAがどのように記憶・学習に関与するか,発現部位の同定や変異体を用いた行動アッセイなどを用いて解析する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していたアプローチでは,ncRNAの合成や輸送に関与すると報告されている遺伝子の変異体の中から,環境刺激に対する応答性の異常を示すものを探索予定だったが,顕著な異常を示すものが見つけられなかったため.現在は,別のアプローチとして,環境刺激応答に異常を示す変異体を用いてRNAシーケンスを行い,解析を進めている.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では,線虫C. elegansを主なモデルとして,記憶・学習に関与するncRNAとその制御因子の解析を行う.これまでに,記憶・学習に障害をもつ既知の変異体と野生型でRNAシーケンスを行ってncRNAや遺伝子の発現パターンを比較し,記憶・学習に関与するncRNAの候補,さらにそれらとともに機能すると考えられる遺伝子の候補を見つけた.今後は,これらのncRNA候補と遺伝子候補の関連を調べ,発現細胞や作用機序などを解析し,より包括的な理解を目指す.
|
Causes of Carryover |
当初は,ncRNAの合成や輸送に関与すると報告されている遺伝子の変異体の中から,環境刺激に対する応答性等を調べて記憶・学習に関与するncRNA制御因子の候補を探索する予定であったが,顕著な異常を示すものがなく,予定がずれたため.その後,別のアプローチとして,記憶・学習に障害をもつ既知の変異体と野生型でRNAシーケンスを行ったところ,ncRNAや遺伝子の発現パターンに差が見られたため,今後は得られた結果をもとに,ncRNA候補と遺伝子候補の関連を調べ,記憶・学習にどのように関与しているか調べる.
|