2016 Fiscal Year Research-status Report
地方公営企業によるPPP導入効果の計測-取引費用を考慮した実証研究-
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16K21165
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
酒井 裕規 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (20612336)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 公共サービス / PPP / 取引費用 / 契約設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、公共サービスのPPP(Public-Private-Partnership)において、効率性などの評価基準の幅を広げて、取引費用やガバナンスという観点も含めた上で、多様なPPPの方式を評価し、課題を克服するための政策的含意を導くことを目的とする。初年度にあたる平成28年度に行われた研究は、以下の通りである。 第一に、わが国の大手私鉄事業者の各部門や子会社間で発生する取引費用と削減させるためのガバナンス制度について研究を行った。これは近年、取引費用の重要性が強調されるEU諸国の上下分離方式の評価を行う国際共同研究に向けた研究である。調査よりグループ内の子会社間の出向制度の中に、取引費用を削減する仕組みがあることを明らかにしている。本研究は現在、海外ジャーナルに投稿している。 第二に、公営バス事業のPPPである「管理の受委託」について、Merkert(2010, 2012)による取引費用計測モデルの一連の研究をもとに、わが国の公営バス事業者の取引費用(取引部門の費用)の推計を行った。本モデルは今後改善の余地があるものの、取引費用の規模についておおまかな傾向は掴んでいると考えられる。現在はより精緻なモデルでの計測を行っている。 第三に、国際的にPPPの成否が分かれる水道事業について、今後民間事業者活用の際に、どのような契約設計が必要かについての事前の調査および分析に向けたデータベースの構築を行った。28年度は主に自治体の水道局やPPPを進めるコンサルティング会社、技術士へのインタビュー調査を行い、水道事業のPPPにおいて取引費用が発生する箇所の特定といかなる制度設計がこの費用を削減するのに役立つかについての調査を進めた。また、事業者へのアンケート調査により取引費用の計測を行うため、アンケート設計の専門家へのヒアリング調査なども行い、本年度の実施に向けた準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の研究プロジェクトの初年度として、当初計画していた課題に関する研究がおおむね順調に進んでいる。平成28年度は海外ジャーナル投稿1件と国際会議参加1件のほか、海外研究者への研究報告、多数の実地調査やインタビュー調査を行っている。 本研究プロジェクトの中間年度にあたる29年度は、Thredbo 15およびERSA 57th(Regional Science in Europe)という2件の国際学会に採択されている。中でも8月に開催される本研究分野ではもっとも重要な国際会議の一つであるInternational Conference on Competition and Ownership in Land Passenger Transportの第15回大会(通称:Thredbo 15)のAbstract審査を経て、公営バス事業の取引費用の計測に関する研究発表が採択されていることも、その進捗状況がおおむね順調であることを示すものといえるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画を踏まえ、初年度の研究成果と分析に向けた準備に基づき研究を進めることを基本としながら、計画通りに研究を推進する予定である。平成29年度は、平成28年度に行ったインタビュー調査やデータベースに基づき、実証分析を進めるとともに、学会報告および論文投稿などを通じて研究成果の公表も行っていく。 国際学会としては、Thredbo 15およびERSA 57thでの成果報告を行う。これらの会議での研究発表および学会参加者との議論等を踏まえて、研究進展を図る計画である。そして学会で得た議論をもとに論文執筆を行う。具体的には、公営バス事業および水道事業の取引費用の計測と効率性への影響の検証に関するものである。これらの研究成果を、海外ジャーナルをはじめとした各種媒体に公表することが本年度の推進方針である。
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Causes of Carryover |
H29年度は正か報告のため、国際学会への参加(2回)や欧州での調査を予定している。そのためH29年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スウェーデンで開催されるThredbo 15、オランダで開催されるERSA 57thといった国際学会への参加の他、海外での実地調査(英国、オランダ、ドイツなど)といった海外渡航を予定している。これらは合わせて80万円程度の支出が考えている。
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