2017 Fiscal Year Research-status Report
地方公営企業によるPPP導入効果の計測-取引費用を考慮した実証研究-
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16K21165
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
酒井 裕規 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (20612336)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 公共サービス / PPP / 取引費用 / ガバナンス / 上下分離 / Misalignment / 契約設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、取引費用やガバナンスという観点も含めた上で、公共サービスのPPP(Public-Private-Partnership)を評価し、課題を克服するための政策的含意を導くことを目的とする。二年目にあたる平成29年度は国内・海外の研究者とともに、欧州鉄道事業で導入されているPPPである上下分離政策の制度再設計に向けた研究を中心に取り組んだ。研究内容は、以下の通りである。 第一に、EU諸国の鉄道事業の上下分離方式の制度再設計への示唆を得るため、昨年度から引き続きわが国の大手私鉄事業者の各部門や子会社間で発生する取引費用を削減させるメカニズムについて研究を行っている。当研究にかかわる論文は、8月に開催されたERSA(The European Regional Science Association)での報告を行い、現在、英文ジャーナルに投稿中である。 第二に、上記の研究をさらに発展させ、鉄道事業全体を投資段階・計画段階・時刻表設計段階・生産段階という4つに分け、どの段階での調整にMisalignmentが発生するのかについて我が国の鉄道事業者へのインタビュー調査を中心に研究を進めている。当研究はオランダの研究者との国際共同研究であり、平成30年1月には、さらなる国際共同研究に向けて英国Leeds大学で開催されたFuture Research on Vertical Structureセミナーに参加し、本研究の現在までの成果を報告を行っている。 第三に、公営バス事業のPPPである「管理の受委託」を評価するにあたり、選択されたガバナンス形態が取引費用理論の観点からどの程度整合しているかを計測し、その不整合変数と成果指標に与える影響について分析を行っている。H29年度は先行研究レビューによる分析方法の習得および計測モデルの構築を行った。本研究はH30年度も継続して行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三年計画の研究プロジェクトの二年目として、当初計画していた課題に関する研究がおおむね順調に進んでいる。平成29年度は国際会議参加1件のほか、国際共同研究に向けた取り組みや、多数の実地調査やインタビュー調査を行っている。この点からしても本研究課題の進捗状況はおおむね予定通りと判断できる。本研究プロジェクトの最終年度にあたる平成30年度においては、当初計画通りこれまで蓄積してきた調査や分析を取りまとめ、研究成果を、査読付ジャーナルをはじめとした各種媒体に公表することが本年度の推進方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画を踏まえ、我が国の公共サービスの民間活用にかかわる研究を進めることを基本とする。当初計画にはなかった鉄道上下分離政策にかかわる国際共同研究も進めているが、本研究は取引費用理論を援用したものであり、研究課題と整合したものであるため、我が国の公共サービスの研究と同時並行で進めていく。 最終年度である平成30年度は、これまで行ったインタビュー調査やデータベースに基づき、実証分析を進めるとともに、学会報告および論文投稿などを通じて研究成果の公表も行っていく。国際学会としては、本研究分野ではもっとも重要な国際会議の一つであるInternational Conference on Competition and Ownership in Land Passenger Transport(Thredbo)第16回大会およびWorld Conference on Transport Research(WCTR)第15回大会での研究発表を予定している。これらの会議での研究発表および学会参加者との議論等を踏まえて、研究進展を図る計画である。そして学会で得た議論をもとに論文執筆を行う。具体的には、鉄道上下分離政策における取引費用の削減に向けたガバナンスと公営バス事業のPPPに取引費用が与える影響の検証に関するものである。これらの研究成果を、査読付ジャーナルをはじめとした各種媒体に公表することが本年度の推進方針である。
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Causes of Carryover |
(理由)H30年度は海外研究者との研究打ち合わせや欧州での調査を予定している。そのためH30年度に繰り越すこととした。 (使用計画)オランダ、英国、フランスの研究者との研究打ち合わせおよび成果報告および海外での実地調査(英国、オランダ、ドイツ、フランスなど)といった海外渡航を予定している。これらは合わせて80万円程度の支出が考えている。
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