2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on theory and practice of human formation through religious moral education
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16K21168
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
広瀬 悠三 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (50739852)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 信頼 / 友情 / デリダ / 歓待 / 自己信頼 / エマソン / 自由ヴァルドルフ学校 / シュタイナー |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)教育における信頼について、従来取り上げられてこなかった背景と、新しく教育人間学で取り上げられるようになった意味を検討し、そこにおいて不足している水平間(友人とのかかわり、自己とのかかわり、事柄へのかかわり)の信頼を、地理的教育人間学の視座から考察し明らかにした。友情はアリストテレスにおいて3つに分けられるが、それらにも収まり切れない友情の謎が、実は信頼の神秘性と軌を一にしていることを、デリダの歓待と友情の議論を踏まえ、また友情を問題にしている小説にも配慮しながら、解明した。この友情における無条件の信頼は、自らを受け入れて生きるという自己信頼を不可避的に要請することになり、さらには自らがこの世界で生きるにあたって、自らを捧げる職業的事柄への信頼にまで行きつくことを吟味した。このことを通して、超越性と現実性をつなぎ合わせて、人間を形成する要として信頼が存在することを明らかにした。 (2)水平的な関係としての信頼から敷衍されることとして、水平的な空間へのかかわり、つまりは地理的人間形成が重要な問題として浮き彫りになってくる。地理的人間形成として、単なる地理の教授を超えた学びを実践している自由ヴァルドルフ学校(シュタイナー学校)の地理的教育の内容と意味を、1学年から12学年までの地理的教育の特色を踏まえ、かつその地理的教育とシュタイナー教育全体の位置づけを考察することを通して、解明した。自由ヴァルドルフ学校の地理的教育は、超越的世界を現実の世界にもたらすものとしてとらえられているため、その実践も宇宙論的な有機性を反映させたものでなければならず、教科の枠を超えた現実の大地にみられるあらゆる活動を包括する稀有な学びの場としてみなされている。この教育は、複数主義的な視点を人間にもたらし、宇宙を創造する世界市民の形成の欠かすことのできない教育として特別な意味を有していることを明らかにした。
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