2017 Fiscal Year Research-status Report
膵がんに対するアディポネクチン受容体アゴニストの抗腫瘍効果の解析
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16K21177
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
秋元 美穂 帝京大学, 医学部, 助教 (60437556)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膵がん / 抗腫瘍効果 / AdipoRon / 経口投与 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、動物実験によりAdipoRonの経口投与が膵がんの増殖抑制に有効であることを明らかにするとともに、膵がんの臨床検体を用いた検討によりAdipoRonががん細胞に対して殺細胞効果を示すことを明らかにした。 ①膵がん担がんマウスにおけるAdipoRonの腫瘍増殖抑制効果:ヒト膵がん細胞株(MIAPaCa-2)を皮下移植して担がん状態にしたBalb/cヌードマウスにAdipoRon(60 mg/kg)を経口投与した。移植後50日目までAdipoRonを隔日で投与し、経時的に腫瘍体積を測定した結果、AdipoRon投与群では非投与群と比較して腫瘍増殖が有意に抑制された。この際、体重減少などは見られず、顕著な副作用は確認されなかった。腫瘍の凍結切片をKi67抗体で蛍光染色し、共焦点レーザー顕微鏡下で観察したところ、AdipoRon投与群の腫瘍中では腫瘍細胞の細胞死が誘導されていることが分かった。 ②膵がんの新鮮手術材料におけるAdipoRonの殺細胞効果:島根大学医学部附属病院の消化器外科より提供された膵がんの新鮮手術材料から腫瘍組織を細切し、リベラーゼ処理による分散とフィルターの通過を経て細胞浮遊液を得た。腫瘍細胞に対するAdipoRonの殺細胞効果を評価するため、細胞浮遊液にAdipoRonを添加し48時間後に細胞死のマーカー(PI)および上皮性マーカー(EpCAM抗体)による蛍光染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡下で観察した。その結果、4検体全てにおいて、細胞死が誘導されたがん細胞の割合(PI+EpCAM+/ EpCAM+)がAdipoRon処理により有意に増加することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では膵がん細胞の転移に対するAdipoRonの影響を検討する予定であったが、ヒト膵がん細胞株(MIAPaCa-2)を皮下移植したヌードマウスでは転移が成立せず、これを検討することができなかったため、本年度と次年度の計画の順番を入れ替えるなどの多少の変更があった。また、期間の途中で研究代表者が島根大学医学部から帝京大学医学部へと所属先を移した都合により、一時的に研究活動が停滞した期間があった。しかしながら、当初の予定よりも先行している計画もあり、全体的には大幅な遅れ等は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
膵がん担がんマウスでAdipoRonの経口投与が腫瘍増殖抑制に有効であること、膵がんの臨床検体でAdipoRonががん細胞に対して殺細胞効果を示すことが確認された。この研究成果は膵がんの治療薬としてのAdipoRonの有用性を示唆するものであるが、将来的な膵がん治療への応用に向けてはAdipoRonの作用機構を詳細に解明する必要がある。これまでにヒト膵がん細胞MIAPaCa-2を用いた解析で、AdipoRon誘導性の細胞死はミトコンドリアへのカルシウムイオンの蓄積とそれに続くミトコンドリア由来のスーパーオキシドの増加が引き金となっていること、AdipoR1およびMAPK、ERKシグナルを介していることを見出しているので、これらの発見を基にAdipoRon誘導性の細胞死の分子機序の全貌を明らかにする。 臨床検体を用いたin vitroの検討ではAdipoRonががん細胞の細胞死を誘導することが観察されたが、腫瘍組織中にはAdipoRを高発現している細胞(血管内皮細胞、マクロファージ、樹状細胞、T細胞など)ががん間質細胞として存在しており、AdipoRon投与が腫瘍細胞のみならずこれらの細胞にも影響を及ぼしている可能性がある。膵がん担がんマウスのAdipoRon 投与群と非投与群の間で腫瘍組織中の血管密度、マクロファージの極性変化、樹状細胞およびT細胞の活性などを比較し、AdipoRonの投与ががん間質細胞に及ぼす影響を検討する。 また、当初の計画では膵がん細胞の転移に対するAdipoRonの影響を検討する予定であったが、ヒト膵がん細胞株(MIAPaCa-2)を皮下移植したヌードマウスでは肺や肝への転移が成立せず、これを検討することができなかった。マウス膵がん細胞株(Panc-02)を同系のマウスに同所移植または皮下移植した担がんマウスを用いて再検討を試みる。
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Causes of Carryover |
研究代表者が島根大学医学部から帝京大学医学部へと所属先を移した都合により、研究が一時停滞した時期があった。またこれに伴い、本年度と次年度の計画の一部を入れ替えるなどの変更が生じた。そのため、当初は本年度の研究に使用する予定であった試薬等の消耗品も合わせて次年度に購入する計画である。
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Research Products
(7 results)