2018 Fiscal Year Research-status Report
膵がんに対するアディポネクチン受容体アゴニストの抗腫瘍効果の解析
Project/Area Number |
16K21177
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
秋元 美穂 帝京大学, 医学部, 助教 (60437556)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膵がん / AdipoRon / アディポネクチン / 腫瘍血管形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
①AdipoRonとアディポネクチンの作用機構の相違:アディポネクチン(APN)をヒト膵がんMIAPaCa-2細胞に作用させてもアディポネクチン受容体(AdipoR)のアゴニストであるAdipoRonの場合とは異なり、細胞増殖がわずかに抑制されただけで細胞死は誘導されないことが分かった。そこでAdipoRonとAPNの膵がん細胞に対する作用機序の違いについて検討した。MIAPaCa-2細胞をAPNで処理すると、p38MAPKのリン酸化に加え細胞の生存維持に関わるAMPKの活性化(リン酸化)がAdipoR1依存的に誘導される一方、細胞死誘導に関わるERK1/2のリン酸化が抑制されることが分かった。また、APNの場合は細胞死に繋がるミトコンドリアへのカルシウムイオンの蓄積やミトコンドリア由来のスーパーオキシドの増加は認められなかった。 ②膵がん担がんマウスの腫瘍血管形成に対するAdipoRon投与の影響:これまでの検討でAdipoRonがAdipoRを介して腫瘍細胞の細胞死を誘導することを示したが、腫瘍細胞以外にも腫瘍組織中には血管内皮細胞などがAdipoRを高発現しており、これらに対してもAdipoRonが影響を及ぼす可能性がある。そこで膵がん担がんマウスを用いてAdipoRon投与が腫瘍血管形成に及ぼす影響について検討した。ヒト膵がん細胞株(MIAPaCa-2)を皮下移植して担がん状態にしたBalb/cヌードマウスをAdipoRon投与群と非投与群に分け、移植後50日目までAdipoRon(60 mg/kg)または同量の水を隔日で経口投与した。腫瘍の凍結切片を抗CD31抗体により免疫蛍光染色し、共焦点レーザー顕微鏡下で観察して腫瘍血管密度を評価した結果、AdipoRon投与により膵がん腫瘍組織中の腫瘍血管形成が抑制されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の研究期間中、研究代表者の所属先を移した都合により研究が一時停滞した時期があった。そのため研究の進行が当初の計画通りではない点もあったが、当初予定していた研究計画はほぼ全て完了しており、その研究成果を一報の論文として報告した。現在、二報目の論文を投稿中であり、これに関連して当初の計画には無かった追加実験が発生して本研究の期間を延長する運びとなったため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた研究計画はほぼ全て完了しているが、当初の計画に加えてマイクロアレイによる発現解析などにより、AdipoRon処理に伴うMIAPaCa-2細胞での遺伝子発現の変化を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
現在投稿中の論文に関してマイクロアレイによる発現解析などの追加実験が発生し、その資金が必要となったため。
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