2018 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞を用いた脂肪酸代謝異常症に対するベザフィブラートの有効性評価法の開発
Project/Area Number |
16K21179
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
山田 健治 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (70624930)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脂肪酸代謝異常症 / in vitro probe assay / ベザフィブラート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は脂肪酸代謝異常症に対するベザフィブラート(Bez)のin vivoでの有効性を評価する方法を開発することである。そのためには現在の皮膚線維芽細胞を用いたin vitro probe assay(IVPアッセイ)の精度を高めたり、iPS細胞由来の組織を対象とした実験系の開発が必要と考えていた。 H29年度には脂肪酸代謝異常症患者に対するベザフィブラートの臨床治験の結果が英文誌(Molecular Genetics and Metabolism reports, 2018 Feb)に採択され、既存のIVPアッセイでは臨床的な有効性を評価できないことも報告した。 そこで、H30年度は、fatty acid oxidation flux (FAOフラックス法)というIVPアッセイに変わるin vitroでの脂肪酸代謝能評価方法を評価した。FAOフラックス法でもベザフィブラートの反応性をある程度は評価できることが分かったが、インビトロでの反応性と臨床的な有効性は相関しなかった。しかしながら、「臨床的な有効性」とはそもそも何なのか?という大きな疑問が生じた。脂肪酸代謝異常症は、運動などで発作が誘発されるが、自覚症状が改善して運動量が増加すると、発作回数は増えてしまう。これまでは「発作回数の減少」を臨床的な有効性と考えていたが、その評価自体が間違えであった可能性が示唆された。 少なくとも、現時点では培養皮膚線維芽細胞を用いた既存のin vitroの評価方法では「代謝不全発作の低下」を予測することは困難であるが、それが本当にBezの臨床的な有効性を評価する指標として相応しいものではないことが分かった。まずは「脂肪酸代謝異常症の病状を正確に評価する方法」を確立する必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、「ベザフィブラートの臨床的な有効性」をどう評価するべきなのか、と言う根本的な問題が生じている。少なくとも「患者の発作回数の減少」を「ベザフィブラートが臨床的に有効」と考えると、インビトロとの反応性に相関はないが、発作回数の減少は必ずしも臨床的有効性を反映していないことから、本当にインビトロでベザフィブラートの有効性を判断できない、と結論づけることは出来ない。この根本的な問題に加え、研究責任者本人の業務内容の変化(外来医長に就任)や子どもの出生(育休を取得)が重なり、当初の予定よりも充分なエフォートが割けない状況に陥った。 そのため、H31年度まで研究の延長申請を行い、これを許可されている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは正確に「ベザフィブラートの臨床的な有効性」を評価できない状況では、どれほど精度の高いインビトロの評価方法があっても無意味である。しかし、脂肪酸代謝異常症の主要症状は、筋痛や運動不耐性といった主観的な症状であり、数値で可視化したり、生化学的な検査で客観的に評価しにくい。実際にトレッドミルなどの運動負荷などを行って、どの程度の運動で発作が誘発されるのかを測定できれば客観的な指標になりうるが、人為的に発作を誘発させることが倫理的に許されるのか議論が必要である。 この問題をクリアした上で、IVPアッセイやFAOフラックスといった既存のインビトロでの脂肪酸代謝能評価法の精度を上げる。具体的には細胞培養の条件などを見直し、本当に既存のバイオマーカーが予測因子にならないのか検討する。また同じ評価方法・バイオマーカーでもiPS細胞と皮膚線維芽細胞では結果が違う可能性もあるため、これを確認する。
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Causes of Carryover |
H30年度は当初の予定よりも本研究にエフォートが割けないことから、研究費に余りが生じた具体的には、2018年4月より病棟医長に就任し診療業務が増加したこと、2019年1月に第5子が出生し育児休暇(約1ヶ月)を取得したためである。H31年度は、主に細胞培養に必要な消耗品を購入するが、成果報告のための旅費や論文の投稿費や校正費用にも充てる予定である。
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