2016 Fiscal Year Research-status Report
シリアルフェムト秒結晶学による光化学系II複合体の水分解・酸素発生機構の解明
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16K21181
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
秋田 総理 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 助教 (50751418)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度はシアノバクテリアから光化学系IIを大量に調製する方法の整備、光化学系IIの微結晶の大量調製法の確立、シリアルフェムト秒結晶構造解析を行なった。具体的には、培養スケールを60Lから180Lに変更し、シアノバクテリアの収量を3倍以上に改善した。回収したシアノバクテリアを破砕し、チラコイド膜からタンパク質の可溶化・カラム精製を行ない、以前の3倍以上に相当する約400mgの光化学系IIが得られた。1.5 mLのマイクロチューブ800本にサンプルを分注し、等量の沈殿剤を加えて混合し、20℃で2-3時間インキュベートすることで微結晶を調製した。回収後の結晶を高濃度のPEGで処理することで、最大2.2オングストローム分解能の回折点が得られるようになった。この結晶をグリースと混合し、一定流速で流しながら、上流に532nmのYAGレーザーを2回、下流にX線自由電子レーザーを照射することで、S3状態の回折像を収集した。また、YAGレーザーを照射せず、S1状態のデータを収集した。合計でおよそ68万枚の回折像が得られた。それぞれのデータを2.35オングストローム分解能で処理した。差フーリエ電子密度マップと精密化したそれぞれの構造を比較した結果、マンガンクラスターのO5付近に新たな水分子の電子密度が現れていることがわかった。この水分子O6とO5との距離は1.5オングストロームであり、O=O結合を形成するのに適している。そのため、この部分が酸素の発生部位であると結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザー2回照射後のS3と暗順応状態のS1状態の回折データを収集し、両者の構造解析を行ない、差フーリエ解析によって構造変化を調べた結果、反応中心であるマンガンクラスターの構造変化と、基質の水が結合している状態を捉えることに成功した。5つの反応中間体の内、すでに解析されているS1に続き、S3を解明したが、未だ3つの状態が未解明である。しかしながら、本年度中に実験のおおまかな流れが確立された。また、これらの成果を基にNature誌に論文を投稿し、受理された。従って、本来予定していた計画と比較して、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
一度のSFX実験のために必要なPSIIの量は約1gであるため、コンスタントに精製を行なう。また、微結晶から高分解能のデータが得られる条件のスクリーニングも引き続き行っていく予定である。2017年度は、レーザー1回照射後の状態及びレーザー3回照射後の状態のデータ収集を行なう。差を取るために、暗順応状態のデータ収集は毎回行なう事とする。データの収集方法についてはほぼ確立している。
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Causes of Carryover |
精製法を改良することによって、界面活性剤等の試薬の消費量を抑えることができた。また、公用車を利用することで旅費を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
培養に使用する機器(特にスターラー)は常時50℃で使用するため、故障が頻発しており、修理もしくは新品を購入する必要がある。前年度の余剰額をこれらに当てることとする。
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Research Products
(3 results)