2017 Fiscal Year Research-status Report
地域資源の利用を通じたローカル・ガバナンスの構築―小水力発電を事例に―
Project/Area Number |
16K21182
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
本田 恭子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20637053)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小水力発電 / 再生可能エネルギー / コミュニティ・パワー / 中国地方 / 農業協同組合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,再生可能エネルギーの一つである小水力発電を維持するための社会経済的条件の解明であり,1950~60年代に中国地方の農業協同組合(以下,「農協」とする)などによって建設された小水力発電を事例としている。 平成29年度は,中国地方の29の小水力発電事業者へのアンケート調査結果を分析した。また,補足調査として鳥取県の5事業者および鳥取県小水力発電協会への聞き取り調査を行った。その結果,第一に,中国地方の小水力発電の多くは(1)地域振興や未点灯地域解消を目的として建設され,電力の自家消費は行われなくなったものの,地元雇用などにより地域に長年貢献しており,(2)資金繰りと気候リスク増大に伴う採算性低下が運営上の懸念事項であり,(3)FITにより発電施設の更新と収入増が実現したが,雇用増加効果はみられず,(4)今後も事業者単独での維持を志向していることがわかった。第二に,事業者別の特徴として,(1)電化農協や土地改良区は住民・農業者との深い関係から地元密着型の運営を行っており,経営基盤の脆弱さや政策的支援の乏しさ,発電事業以外の事業を持たないことにより事業の採算性や資金調達が課題であること,(2)農協や市町村は,有資格者の世代交代や日常の運営業務のための人員確保といった人的資源に関する課題を重要視していることを指摘した。以上の結果をふまえて,平成29年度後半では,地域との深いかかわりを持ちながらも運営に多くの困難を抱えている電化農協に対して,集中的に聞き取り調査を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小水力発電事業者へのアンケート調査より,事業者の種類によって事業運営や地域とのかかわりが異なることを明らかにすることができた。この調査結果をふまえて,平成29年度後半は,事業者のなかでも地域とのかかわりが相対的に深い電化農協の動向に焦点をあてて,事業者および関連団体への聞き取り調査を実施してきた。また,来年度の国際学会での報告に向けて,成果のとりまとめや執筆にとりかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度後半より実施してきた電化農協と関連団体への聞き取り調査を平成30年度も継続する。平成30年度後半には,調査結果のとりまとめと原稿執筆を行う。また,最終年度にあたることから,平成30年夏に開催される国際学会において研究成果を発表する予定である。平成29年度末から発表に向けた準備を進めている。
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Causes of Carryover |
現地に滞在しての調査を予定していたが,日帰りでの調査が可能であったことから日帰り調査に切り替えた。そのため,予定よりも旅費への支出が減額した。 平成30年度は,小水力発電事業者および関連団体・企業への聞き取り調査を実施するための旅費やテープ起こし委託費,研究成果発表にかかる旅費を中心に研究費を使用する予定である。
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