2017 Fiscal Year Research-status Report
現代中国農村女性の政治参加の実態とその社会関係・社会連帯に関する文化人類学的研究
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16K21200
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
緒方 宏海 香川大学, 経済学部, 准教授 (10750044)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 村民自治 / 農村女性 / 政治参加 / 中国 / 人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国社会や共産党が農村女性の政治参加にどのように対応したかについて明らかにするとともに女性の政治参加の実態と政治参加に影響を及ぼす社会関係、 社会的連帯の要因を解明することである。 従来の研究では、農村において社会的・文化的に構築された男性優位の性別秩序のなかで生きる女性という構図のなかで女性の政治参加を捉えていた。 ここから抜け出して、 農村女性の社会関係的要因などが政治参加に与える影響について未着手であった。 本研究はまだ解明されていない中国農村女性の政治参加の実態を研究し、人類学の視点から女性の政治参加について新たな理論開拓を行う。 2017年度の研究内容は、論文投稿と実態調査が中心であった。2016年山東省で行った村民委員会選挙の女性の投票行動について、論文としてまとめ、学会誌に掲載された。 また2017年に遼寧省沿海部において、離農に直面する村に生きる農村女性が、村落内の政治と経済活動について、どのような役割を担っているのかを実態調査した。その結果、女性の政治参加や経済活動には、その家族構成、親世帯との居住形態にも影響を受けることが明らかとなった。この調査結果をまとめ、2018年度内に学会誌に投稿する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、遼寧省沿海部以外に、福建省龍岩市の一つの村にて調査を実施した。村民自治の基本構成要素として、「村民監督」、「村務公開」、「村規民約」、「自我管理」などの村の実施状況についても調査を実施した。選挙と村民委員会の調査以外に、村の共産党支部と宗族の分布活動などの社会的要素、土地・山林経営、農業経営、出稼ぎなどの経済的要素についても調査を行った。そのほか、村の地図の作成、宗族の族譜資料の収集などの作業も順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度では、2017年の調査を踏まえ、村民委員会の選挙の具体的プロセスを検討するほか、村の党支部と地方幹部との権力関係など、華南地域全体の動向について見ていく。今日中国社会において、村民委員会のメンバーに高学歴や企業経営者が選ばれる傾向が強まっている。こうした中で中国の農村女性が、如何にして、村民委員会の委員として選ばれ、政治参加を果たすのか、ますます注目していくことが必要である。農村女性が、村落内外の社会関係のなかで、どのような関わりをもち、どのような機能を果たしていくのか、その様相を記述することは、中国社会の村民自治の実態を明らかにすることと直結しており、これまで中国地域研究においてほとんど取り上げられることのなかった研究テーマである。今年度では継続調査しながら、三年間の成果を論文投稿のかたちで発表する予定である。
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Causes of Carryover |
前年度では、福建省において台風の影響で調査を実施できなかった村があった。本年度では、昨年度調査実施できなった村について継続調査を実施する。
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Research Products
(1 results)