2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Establishment of modern "mise en scene" and the development of actor training : configuration of the concept of acting body
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16K21209
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中筋 朋 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (70749986)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フランス演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、前年度にひきつづき、辞書編纂者として知られるエミール・リトレの精神生理学についての考えを検討し、さらに脳生理学の世紀末演劇への影響として、ラシルドの「脳の劇」である『死の夫人』について細かい分析をおこなった。これにより、当時の科学思想との関わりを、文学における「驚異」「幻想」「怪異」というそれぞれのジャンルにおいて検討する可能性がひらかれた。具体的には、ラシルドの「脳の劇」を幻想文学と科学文学の狭間にあるものとして検討することにより、19世紀の幻想小説の隆盛により、またトドロフの有名な定義により可能性を狭められていた「驚異」の感覚が、科学に対する「驚異」という形であらたに生まれ変わる可能性があることを明らかにした。また、リトレの思想においては、生物学と化学の違いが意識されていることが特徴的である。これは、ギンズブルグが指摘した推論的パラダイムとも密接に関係している。つまりギンズブルグは、ガリレオ以来の近代科学文明において、医学(19世紀フランスの文脈では生理学としてもわかりやすい)がいかにそのパラダイムに組み込まれない存在かということを強調しており、それが19世紀末に大きなパラダイム転換をもたらしたということを述べているが、これが、医者であり詩人であったリトレによって体現されているのである。これについては今後もより詳細な研究が必要であるが、今年度の研究により、文学書・思想書・科学書を単なる影響関係を超えた総合的「書物」として読む可能性がひらかれた。
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Research Products
(1 results)