2016 Fiscal Year Research-status Report
液晶配向を駆動力とした温度応答性ナノシリンダーチャネル膜の創製
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16K21210
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
波多野 慎悟 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (70397157)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 両親媒性ブロックコポリマー / サーモトロピック液晶 / ミクロ相分離構造 / 垂直配向シリンダー / ナノチャネル / 温度応答性ポリマー / 透過膜 / 架橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では側鎖液晶型ポリマーを疎水性ブロック、温度応答性ポリマーを親水性ブロックとする両親媒性ブロックコポリマーを合成し、液晶配向を駆動力として温度応答性ポリマーが形成するシリンダードメインを垂直配向させた新しいナノシリンダーチャネル膜を開発する。 最初に、温度応答性ポリマーであるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM72;分子量約9400)をreverseATRP法で合成した。続いてPNIPAM末端のハロゲンを開始点としてATRP法によって側鎖液晶型液晶ポリマーであるPMA(Az)nを合成し、両親媒性ブロックコポリマー (PNIPAM72-b-PMA(Az)n, n = 37, 44, 84) とした。 ブロックコポリマーの薄膜状態でのミクロ相分離構造を制御するために、薄膜調製溶媒やアニーリングの検討を行った。種々の溶媒を用いて2wt%ポリマー溶液を調製し、2000rpmでスピンコート薄膜を作製した後、140℃で2時間アニーリングし、液晶配向による高配向性ミクロ相分離構造の誘起を試みた。原子間力顕微鏡を用いた膜表面モルフォロジー観察の結果、THF/水混合溶媒から調製した膜ではドットパターンが観察され、PNIPAMが垂直配向シリンダードメイン形成の可能性が示された。また、トルエンから調製した膜ではラインパターンが観察され、PNIPAM水平配向シリンダードメイン形成の可能性が示された。この結果は本研究テーマの目的とは異なるが、薄膜調製溶媒によって様々な相分離パターンを創製できるという点では興味深い結果となった。 また、薄膜の自立膜化を目指してDiels-Alder型架橋反応部位を有する液晶モノマーを開発し、液晶ポリマーへの導入を試みた。当初、重合中に副反応が起こることが明らかとなったが、重合触媒として0価の銅を用いることで副反応を抑制することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原子間力顕微鏡を用いて薄膜のミクロ相分離構造制御を行う段階で、PNIPAMドメインとPMA(Az)ドメインのコントラストが不明瞭になりやすく、慎重に観察を重ねた。その結果、多くの時間を費やすこととなった。そのため、PNIPAMドメインの水中での温度応答性挙動調査や透過用の膜調製なども28年度に進めていきたいところだったが、それらの検討には至らなかった。 一方で、架橋性液晶ユニットを含むブロックコポリマーの合成や、相分離構造制御については一定の成果が見えているため、全体としては深刻な遅れではないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続きブロックポリマーの合成や相分離構造制御を行っていく一方で、自立膜、複合膜の作成を進めていく。 ブロックコポリマーの合成では、架橋ユニットの導入を検討し、自立膜化へと展開していくことと、より明確なミクロ相分離構造を誘起するために高親水性のポリエチレンオキシド(PEO) を導入したトリブロックターポリマー (PEO-b-PNIPAM-b-PMA(Az)) の合成を検討したいと考えている。PEOの導入により、親水性ブロックと疎水性ブロックが明確となる。これによりPNIPAMが持っている温度応答性を損なうことなく、ミクロ相分離の制御を容易にすることが期待できる。
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Causes of Carryover |
年度末に少額の残金を使い切るよりは、年度初めの試薬代として使用する方が効率よく研究を進めることができる。特に汎用溶媒は大量に保管することができないため年度末に買い貯めることも不可能である。従って、無理に使わずに次年度に残しておいた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額分は29年度初めの試薬購入に用いる。
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Research Products
(1 results)