2016 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージ機能のスイッチング作用を有するチタン製インプラントの創製
Project/Area Number |
16K21212
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
戸井田 力 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (40611554)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インプラント / 再生医療 / 炎症 / マクロファージ / リポソーム / 交互浸漬法 / 骨伝導性 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨の組織再生を目的にチタンが臨床応用されているが、新生骨再生が遅く、治癒期間が長いことが問題であった。本研究では、抗炎症性を有するリポソームをチタン表面に修飾することで、骨再生が促進されるか細胞、動物を用いて検討している。チタン表面をプラズマ処理にてアニオン化後、カチオン性高分子プロタミン、アニオン性リポソームの交互浸漬(LbL)により、リポソームを修飾した。しかし、リポソームの融合あるいはLB膜形成により膜厚の増大が限定的であった。そこで、新たに架橋型リポソームを調製し、リポソームを安定化させた。同様にLbLを行ったところ、LbLサイクル数に依存した膜厚増大が認められた。LbLサイクル数の異なるチタン基板および未修飾チタン基板上にRAW264.7マクロファージ細胞を播種し、リポ多糖およびインターフェロンγにより炎症を惹起した。未修飾のチタン基板と比較して、抗炎症性リポソームを修飾したチタン上では、炎症性サイトカイン産生量およびNO産生量が小さかった。また、この抗炎症効果はLbLサイクル数が増えるに伴い大きくなり、LbLを30サイクルしたチタン基板上では、ほぼ完全に炎症性サイトカイン産生、NO産生を抑制した。また、マクロファージと間葉系幹細胞、骨芽細胞、破骨細胞との相互作用を評価する予定であった。しかし、RAW264.7マクロファージ細胞株は活性が低く、増殖因子の産生が検出限界以下であり、細胞間相互作用を評価できなかった。来年度は、より活性が高いと推測される初代培養マクロファージを用いて、評価を行う予定にしている。現在、チタン丸棒をラット骨欠損モデルに埋入し、骨組織の再生が認められるか調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗炎症性リポソームを修飾したチタン基板、丸棒を調製できた。さらに、修飾基板上で、マクロファージの炎症性サイトカイン産生およびNO産生を強く抑制できることを明らかにしている。しかし、RAW264.7マクロファージ細胞株は活性が低く、増殖因子の産生を評価することが難しく、間葉系幹細胞、骨芽細胞、破骨細胞との相互作用を評価できなかった。来年度は、初代培養マクロファージを用いて、評価を行う予定にしている。一方、来年度予定していた動物実験を前倒しして検討を始めることができている。以上より、おおむね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画以上に進展しており、計画通り研究を進める。サンプル作製に半日かかるが、この部分は自動化が可能かと思われる。また、実用化に向けてサンプル作製を容易にする点は重要である。当初、この点は予定していなかったが、今後検討を進める予定である。RAW264.7マクロファージ細胞株は活性が低く、増殖因子の産生を評価することが難しく、間葉系幹細胞、骨芽細胞、破骨細胞との相互作用を評価できなかった。来年度は、初代培養マクロファージを用いて、評価を行う予定にしている。
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Causes of Carryover |
マクロファージと各種細胞との相互作用の検討が順調に進んでいない。このため、その評価に利用する予定であった分子生物学試薬を購入しなかった。また、異動初年度のため、研究体制が整わず、学会発表、参加が叶わず、旅費を捻出しなかった。これらの理由のためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、初代培養マクロファージを用いることで、各細胞との相互作用の検討が進展すると思われる。これに用いる分子生物学試薬を購入する。また、学会発表のための旅費に捻出する予定である。
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Research Products
(8 results)